今回の記事は、私の5回目の個展についてです。
田村元 怪画展 ― 小さなものから大きなものまで ―
2009年4月28日(火)~5月10日(日)
ギャラリーMON (香川県)
会場となったギャラリーMONは、香川県では少なくなった正統派のギャラリーの一つです。
2007年の開業以来、県内外の多くの作家さんたちが個展や合同展を開催しています。オーナーの川添社長も美術の他に映画や出版関係などに造詣が深い方です。
個展概要
この企画では、新作5点と旧作13点の合わせて18点を出展しました。もっとも、ミニ色紙13点を1作として数えたので、厳密には合計30点とも言えます。
《十二支戯画》
新作の目玉は、何と言っても大作《十二支戯画》です。縦1メートル、横10メートルのキャンバスは、10年経った今も私が描いた最大の作品です。
その大きさは勿論、展示初日まで秘密にしておきたかったこともあり、構想だけでなく作業場所の確保にも悩みました。
最終的に、高松市内の某スタジオを借りることにしました。スタジオの日中の予定は全て埋まっていたため、金曜日の午後10時から翌朝6時までの8時間の間にしました。変則的な時間帯でしたが、真夜中なら誰にも邪魔されることなく作業に専念できました。
もっとも、自宅ではないので、早朝に作業を中断した後は毎回スタジオを掃除して丸めたキャンバスと画材を自動車に積んで帰宅しなければなりませんでした。
更に、徹夜の作業から帰宅したらすぐに当時していた別の仕事のためにすぐに出かけるというスケジュールが8週間続いたのは流石に堪えました。10年前でしたから何とか乗り切れましたが、今ではそんな無茶なことはとても無理です。
ともあれ、単純に大きいというだけでも十分に人目を引いたのは間違いなく、香川県の地元紙「四国新聞」や「毎日新聞」香川版の他にも、地元の情報誌『月刊 香川こまち』にも写真付きで大きく紹介されるなど《十二支戯画》はかなり注目されました。
因みに、この作品から10年後の今年に Clip Studio を使用して、龍と鼠の部分を再び描いてみました。
8日間で描いた10メートルのアクリル画と約1日で描いたデジタル絵なので単純に比較できないかもしれませんが、個人的には今の絵の方が遥かに上達したと思います。
《蓮池夢遊魚図》
言うまでもなく、《十二支戯画》だけに専念していた訳ではなく、金曜日以外は別の新作を制作していました。
《蓮池夢遊魚図》は、発表当時に「伊藤若冲に捧ぐ」という副題を付けた通り、伊藤若冲の「動植綵絵
」の一幅《蓮池遊魚図》のパロディです。
若冲のパロディを描くとは随分身の程知らずなことしてしまったと思いますが、普段はしない模写のような作業を通して若冲の並外れた描写力を改めて痛感しました。
《十二支ダジャ連画 ネコの逆襲》
この個展で《十二支戯画》と並んで特に好評だったのが《十二支ダジャ連画 ネコの逆襲》です。
題名の色紙を中心に、十二支に入れなかった猫がそれぞれの干支に絡む駄洒落のミニ色紙を円形に配しました。視覚的駄洒落の面白さに加えて、各作品が500円という手頃な価格ということもあり、多くの方に購入して頂きました。
尚、この連作は後に一冊の豆本として製本して、こちらも好評でした。詳細は、こちらを御参照ください。
余談
大成功となったギャラリーMONさんでの個展は、私の私生活にとっても大きな転換点となりました。
知り合いの作家さんが会場に連れて来た一人の女性が私の《ネコの逆襲》を気に入って2点購入して下さりました。これが縁で知り合ったのが、現在の私の妻です。
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