『モスラ』4Kデジタルリマスター版(午前十時の映画祭)

こんにちは。タムラゲン (@GenSan_Art) です。

『モスラ』4Kデジタルリマスター版(午前十時の映画祭)

イラスト:タムラゲン Illustration by Gen Tamura

今日は、イオンシネマ宇多津にて、『モスラ』4Kデジタルリマスター版を鑑賞しました。今年から再開した「午前十時の映画祭11」の企画です。

 

スポンサーリンク Sponsored Link

『モスラ』について

モスラ
Mothra
1961年7月30日 公開
東宝株式会社 製作・配給
カラー、シネマスコープ、102分 (序曲付)

スタッフ

製作:田中友幸
原作:中村真一郎、福永武彦、堀田善衛
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二
脚本:関沢新一
撮影:小泉一
美術:北猛夫、安倍輝明
録音:藤縄正一、宮崎正信
照明:髙島利雄
音楽:古関裕而
振付:県洋二
編集:平一二

キャスト

福田善一郎:フランキー堺
中條信一:小泉博
花村ミチ:香川京子
小美人:ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)
クラーク・ネルソン:ジェリー・伊藤
原田博士:上原謙
国立核総合センター院長:平田昭彦
救難ヘリコプターの隊員:佐原健二
防衛長官:河津清三郎
天野貞勝デスク:志村喬
第二玄洋丸船長:小杉義男
防衛軍指揮官:田島義文

あらすじ

日本とロリシカ両国政府によるインファント島調査隊が結成され、原田博士、言語学者 中条信一、新聞記者 福田善一郎、カメラマンの花村たちが参加します。上陸した一行は、身長30センチの小美人に出会います。帰国後、調査隊は調査内容を秘密にしましたが、調査隊の事務係ネルソンがインファント島から小美人たちを連れ去り、見世物にします。彼女たちの歌声は、テレパシーでインファント島の神殿に安置されているモスラの卵に伝えられます。卵から誕生した巨大な幼虫は日本に向かいます。大型機編隊の集中砲火をものともせず、モスラは東京都心へ上陸します。ネルソンは小美人をつれて国外へ逃亡します。東京タワーで繭を作ったモスラは、幼虫から巨大な蛾へと変化して小美人を求めてロリシカ国へ飛び立ちます。中条たちはネルソンから小美人を奪取します。飛行場で小美人と再会したモスラは、インファント島へと戻るのでした。

 

スポンサーリンク Sponsored Link

『モスラ』を再見して思ったこと

初見の頃

モスラは、ゴジラ、ラドンと並ぶ東宝の三大怪獣の一体です。卵、幼虫、繭、成虫への変化というファンタジー色溢れる要素に加えて、小美人に扮したザ・ピーナッツが歌う《モスラの歌》はあまりにも有名です。

1996年から1998年の三部作と2018年のアニメ版ゴジラを除けば、モスラが出演したゴジラ映画は全て見たことがあります。ですが、モスラが初登場する今回の映画は、子供の頃にVHSで一度見ただけです。

『モスラ対ゴジラ』(1964) は何十回も見たのに元祖『モスラ』を再見しようと思わなかった理由は何か考えてみました。ゴジラが出てこない、音楽が伊福部昭でない、なども理由かもしれませんが、一番はやはり当時の自分が面白いと思わなかったからかもしれません。特に、フランキー堺が演じる主人公のコメディ的な場面が肌に合わなかったように覚えています。ですから、たとえゴジラと伊福部昭が揃っていても、同時期の『キングコング対ゴジラ』(1962) のおちゃらけなムードや先住民を侮辱したかのような描写も苦手でした。

午前十時の映画祭

今回4Kデジタルリマスター版が上映されるので、約30年ぶりに漸く『モスラ』を再見しました。

午前十時の映画祭 『モスラ』 4Kデジタルリマスター版
「午前十時の映画祭」上映作品は、グループAの劇場では4Kデジタルリマスター版での上映ですが、香川県のイオンシネマ宇多津では2K上映です。上映開始時刻は、午前9時50分でした。

2019年2月の『七人の侍』4Kデジタルリマスターの上映までは、私も岡山県のTOHOシネマズ岡南まで見に行っていましたが、さすがにコロナ禍が収束していない現状では県外までの移動はリスクがあるので、県内の上映を見に行くことにしました。

2Kでの上映とは言え、4Kと遜色ない鮮明な映像でした。しかも、公開当時にのみ付いていた「序曲」も復元された正真正銘の完全版『モスラ』です。

この動画も素晴らしいです。傷だらけになっていたフィルムをデジタルで修復し、60年前の姿を再現して下さったスタッフの皆様の努力に感謝します。そして、特筆すべきは香川京子のコメントです。『モスラ』は、数多くの名作に主演した伝説の名女優が出演した唯一の怪獣映画でもあるのです。韓国の映画祭にも自身の代表作の一本として『モスラ』を選んだというエピソードに感動します。

因みに、これまでの午前十時の映画祭でも、小津安二郎の『東京物語』(1953)、溝口健二の『近松物語』(1954)、黒澤明の『天国と地獄』(1963)、『赤ひげ』(1965) という具合に、香川が主演した巨匠の名作が上映されてきました。

政治的背景

劇中のロリシカ国がアメリカを想定した架空の国であることは明白です。そのため、サンフランシスコ講和条約が発効した1952年に日本が独立を回復していたにも関わらず、在日米軍が外国人の犯罪捜査などを主導しているという描写の矛盾が指摘されることがあります。

確かに、建前上は日本は独立したとは言え、今もアメリカは日本の政治に大きな影響力を持ち、後を絶たない在日米軍の犯罪は日米地位協定によって日本の司法では裁ききれていません。そうした現状を考えると、この映画の政治的背景の描写が本当に誤っているのか疑問になってきます。

又、ネルソンが本国ではなく日本で小美人を見世物にしたためにモスラが日本に襲来するという展開は、アメリカのせいで日本が被害を受けるという「ひがみ」だと佐藤健志が指摘しています。「ひがみ」かどうかはさて置き、私自身もアメリカ人の知人から「ハリウッド映画は世界中を舞台にするのに、なぜ日本の怪獣映画はいつも日本にばかり怪獣が出現するのか訳が分からない」と言われたことが何度かあります。

身も蓋もない見方をすれば、日本人俳優が主演する日本映画なので尚且つ観客層も日本人が大半なので日本を舞台にしたとしか考えられません。たまに『怪獣総進撃』(1968)、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)、『ゴジラ FINAL WARS』(2004) のように部分的に外国に怪獣が出現することがあっても、結局は日本が主な舞台でしたし。

そう言う意味では、近年の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019) も最終決戦地こそボストンでしたが世界中を舞台に多国籍の登場人物が活躍していたので、作品の出来とは別に、国境を越えた怪獣襲来のスケール感は完全に日本映画を凌駕していました。

まとめ

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でも大活躍したモスラでしたが、やはり個人的には日本のモスラの方が好きです。

ゴジラ・シリーズ等に出演回数の多い歴代モスラの中でも、初代モスラのカリスマ性は別格だと久しぶりに再見して思いました。人間の価値観で善悪を図り切れない人知を超えた大怪獣としての存在感は、今回の鮮明な映像をスクリーンで鑑賞することによって実感することが出来ました。

又、60年前のアナログ特撮も当時としてはかなり手の込んだミニチュアと相俟って見応えがあります。東京タワー周辺に高層ビルが一つも無い頃の東京の景色も新鮮です。

日本映画全盛期の豪華な作り方に満ちた『モスラ』は、デジタルで修復された今こそ多くの人に見てほしいと思います。

(敬称略)

『モスラ』4Kデジタルリマスター版の上映日程は次の通りです。

グループA 2021年12月24日(金) ~ 2022年1月6日(木)
グループB 2021年12月10日(金) ~ 2021年12月23日(木)

「午前十時の映画祭」公式サイト:https://asa10.eiga.com/

 

スポンサーリンク Sponsored Link

参考資料

『円谷英二の映像世界』 山本眞吾 編、実業之日本社、1983年

『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』 佐藤健志、文藝春秋、1992年

グッドモーニング、ゴジラ 監督 本多猪四郎と撮影所の時代 (復刊版)』 樋口尚文、国書刊行会、2011年

「モスラ」が4Kで復活、「都市伝説」も解明 調布の東京現像所が修復」(調布経済新聞 2021年12月10日)

デジタルリマスターと映像アーカイブの可能性」(VECTOR 2021年12月10日)

モスラ」 – 東宝オフィシャルサイト

コメント COMMENTS