こんにちは。タムラゲン (@GenSan_Art) です。
3月20日、映画『シン・仮面ライダー』を妻と一緒に近所の映画館で鑑賞しました。
『シン・仮面ライダー』について
シン・仮面ライダー
Shin Kamen Rider
2023年3月18日 公開
シネバザール 製作
東映 配給
カラー、121分
スタッフ
監督・脚本:庵野秀明
原作:石ノ森章太郎
製作:村松秀信、西新、野田孝寛、緒方智幸、古澤圭亮、藤田浩幸、菅井敦、香田哲朗、池邉真佐哉、飯田雅裕、池田篤郎、田中祐介
スーパーバイザー:小野寺章
エグゼクティブプロデューサー:白倉伸一郎、和田倉和利
企画・プロデュース:紀伊宗之
プロデューサー:小出大樹
脚本協力:山田胡瓜
准監督:尾上克郎
副監督:轟木一騎
デザイン:前田真宏、山下いくと、出渕裕
扮装統括・衣裳デザイン:柘植伊佐夫
撮影:市川修、鈴木啓造
照明:吉角荘介
美術:林田裕至
録音:田中博信
アクション監督:田渕景也
VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀
編集:辻田恵美
整音:山田陽
音響効果:野口透
助監督:中山権正
仮面ライダー造形:藤原カクセイ
オーグ造形統括:百武朋
音楽:岩崎琢
エンディング曲
「レッツゴー!! ライダーキック」
作詞:石森章太郎 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:藤浩一、メール・ハーモニー
「ロンリー仮面ライダー」
作詞:田中守 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:子門真人
「かえってくるライダー」
作詞:滝沢真里 / 作曲・編曲:菊池俊輔 / 歌:子門真人
キャスト
本郷猛/仮面ライダー・第1バッタオーグ:池松壮亮
緑川ルリ子:浜辺美波
一文字隼人/仮面ライダー第2号・第2バッタオーグ:柄本佑
緑川弘:塚本晋也
SHOCKERの創設者:松尾スズキ
コウモリオーグ:手塚とおる
ヒロミ/ハチオーグ:西野七瀬
カマキリ・カメレオン(K.K)オーグ:本郷奏多
背広の男:上杉柊平
サソリオーグ:長澤まさみ
本郷猛の父:仲村トオル
犯人:安田顕
緑川イチローの母:市川実日子
ケイの声:松坂桃李
クモオーグの声:大森南朋
情報機関の男:斎藤工
政府の男:竹野内豊
緑川イチロー/仮面ライダー第0号・チョウオーグ:森山未來
公式サイト
『シン・仮面ライダー』雑感(ネタバレあり)
久々の快作
オリジナルの『仮面ライダー』が放送開始した1971年には私はまだ生まれていませんでしたので、最初に見たのは小学校低学年のときの再放送でした。
子どものときから特撮好きでしたので仮面ライダーも熱心に見てましたが、どちらかと言えば昔からウルトラマン派でした。恐らく巨大な怪獣やミニチュア特撮の方が性に合っていたのだと思います。
ですから、今回の『シン・仮面ライダー』もどんな映画になっているのか皆目見当が付きませんでしたし、可能な限り情報を遮断して見に行きました。
結論から先に言えば、想像していたより見応えありました。初見のインパクトなら、『シン・ウルトラマン』以上、『シン・ゴジラ』未満といった感じでした。一緒に見に行った妻も非常に気に入ったようで、帰りの道中に二人で感想を話し合いました。
まだ一回鑑賞したばかりで、作品の細部を幾つも見落としていると思いますが、あれこれ思ったことを綴っていみます。(因みに、石ノ森章太郎の原作は未読ですので、何か的外れな記述があった場合はご容赦ください)
先ず何よりも、オリジナルの『仮面ライダー』を巧みに現代風に換骨奪胎したなぁ、と思いました。庵野秀明が自ら演出しただけあって『シン・ウルトラマン』以上に物語と映像の密度が高くなっています。
最初のテレビ版の稚拙な特撮が子供の頃でも見ていて辛かったので、今回は現代の特撮で映像化されたサイクロン号の変形や崖から転落する大型トラックなど大迫力の映像の連続でした。デザインの面でも、仮面ライダーは勿論、怪人たちのスーツも非常に洗練されていて申し分ない出来でした。
冒頭の本郷猛と緑川ルリ子の逃走から、山頂に立って登場する仮面ライダー、クモオーグとの死闘は息もつかせない展開で、尚且つテレビ版第1話の映像を忠実に再現していて、手に汗握りながら感心しました。
YouTubeの東映チャンネルで見た第2話では、ライダーが戦闘員をアパートの屋上から投げ落として地面に血しぶきが飛ぶ描写に驚きましたが、今回はライダーが戦闘員に攻撃する度に更に激しい血しぶきが飛んで再び仰天しました。映倫のレイティングはPG12指定ですが、R15+でもおかしくないほどの描写だったと思います。
もっとも、戦闘場面の暴力描写が生々しいからこそ、悪の組織と闘うためとは言え人の命を奪ってもいいのかという本郷の苦悩に説得力が出てきます。人間の自由と平和を守るための闘いではあっても、無益な殺生を極力避けようとするヒーローはウルトラマンと違って等身大だからこそ身近に感じられる存在にする必要があったのかもしれません。
ところで、本筋とはあまり関係ない細部にも色々と驚かされました。
先ず、SHOCKERの人工知能ケイが、ロボット刑事Kとそっくりだったのには意表を突かれました。コロナ禍の影響で『シン・仮面ライダー』はテレビ版『仮面ライダー』50周年には間に合いませんでしたが、同じ石ノ森章太郎原作の『ロボット刑事』は今年が放送50周年だったのは面白い巡り合わせです。
本郷とルリ子がハチオーグが潜む街の商店街を歩いている場面で「ジェッディン・デデン (Ceddin Deden)」が流れていたのにも驚きました。このトルコの伝統的軍楽は、1979年のNHKドラマ『阿修羅のごとく』のテーマ曲としても有名です。
庵野が自ら選んだ「仮面ライダー」傑作選には第40話「死斗!怪人スノーマン対二人のライダー」があったので、1号ライダーと2号ライダーの闘いがあると予想していました。
果たして1号と2号の闘いはありました。ですが、テレビ版ではショッカーに捕らわれた1号が洗脳されて2号と闘うという展開だったのに対して、今回は緑川イチローが用意した同種の昆虫合成型オーグメントという一文字隼人が本郷と闘い、ルリ子によって洗脳を解かれるという展開でした。考えてみれば、もう一体仮面ライダーを作っておきながら二度も脳手術前に脱走されるというショッカーという間抜けな展開よりは今回の脚色の方が「すっきり」します。
それに、本郷とルリ子の前に初めて姿を見せた一文字が「お見せしよう」と言ってコートのファスナーを下げる所は、佐々木剛が演じた一文字の最初の変身を彷彿とさせました。カマキリ・カメレオンオーグに戦いを挑む場面で「ショッカーの敵。そして、人類の味方」という台詞が出てきた瞬間、遂にヒーローとしての仮面ライダーが完成したと胸が熱くなりました。
実は、本郷役と一文字役に池松壮亮と柄本佑が発表されたときは意外に思いましたし、大丈夫だろうかという気持ちがありました。ですが、そうした懸念は杞憂でした。新しい本郷猛の優しさと苦悩に満ちたキャラは池松壮亮が演じるからこそ説得力がありましたし、一文字隼人の飄々としたキャラに柄本佑はピッタリでした。
困った点
全体的に面白かった『シン・仮面ライダー』ですが、幾つか困った点もありました。
先ずは、全体的に説明的な台詞が多すぎることです。『シン・ゴジラ』と『シン・ウルトラマン』もそうでしたが、今回は録音のせいか聴き取りにくい台詞もありました。それに、等身大アクションが多いので大量の台詞が没入感を削いでしまうように感じました。説明的な台詞が多すぎるのはアニメの悪影響かもしれませんが。
説明的な台詞が多い割にはSHOCKERという組織の全貌が分かりにくかったです。いくら秘密結社を自称しているとは言え、組織の構成員の関係などが掴めないまま終わってしまった感じでした。
大量発生型相変異バッタオーグとの戦闘が暗すぎます。テレビ版のショッカーライダーは6体ですっきりしない倒され方だったのに対して、今回は11体も出てきてバイクで爆走しながらマシンガンまで連射しながら派手な攻撃をしかけてきます。苦戦する本郷を助けるために一文字も参戦してダブルライダーが誕生するという全編中最も燃える戦闘場面なのに、トンネル内の暗さで何が起こっているのか殆ど見えませんでした。せっかくの見せ場が勿体無いです。
そして、チョウオーグとの死闘で、エネルギー切れとは言え、イチローがルリ子の精神の説得で手を引くのがあっさりすぎました。まぁ、テレビ版のショッカー首領の最期よりは粘っていた方ですが。
結末と続編への期待
イチローを倒すと同時に本郷も消滅していった展開は賛否が分かれるかもしれません。本郷の精神が残った新しいマスクとスーツを一文字が最後に身に纏いますが、その姿が新1号ライダーだったのは最後の驚きでした。
テレビ版では、旧1号のスーツは模様が無く、旧2号のスーツで初めて両腕と両脚に1本の白ラインが付き、後に登場した新1号のスーツに2本の白ラインが付きました。つまり、1号なのに白ラインが2本で、2号は1本という逆転したデザインになっていました。
それを『シン・仮面ライダー』の結末では、本郷(1号)の遺志を継いだ一文字(2号)が新1号スーツを纏うことによって、2本ラインのスーツが晴れて2号のスーツとなる結末には奇妙な「すっきり」感がありました。
ところで、SHOCKERはまだ壊滅した訳ではなく怪人もまだ出現しているので、一文字は再び戦いに赴くところで映画は幕を閉じます。
気になるのは続編があるかどうかです。
テレビ版の7人ライダーは立花藤兵衛たちと行動を共にする以外は基本的に一匹狼のような存在でした。『シン・仮面ライダー』は市井の人々は殆ど登場せず、本郷たちとSHOCKERの闘いのみに焦点が当てられた狭い世界です。
立花藤兵衛の代わりに本郷やルリ子たちは政府と情報機関の男から協力を要請(強制?)されます。『シン・ゴジラ』でもそうでしたが、一般人よりも政府の人間にばかり目を向ける庵野の姿勢には疑問を覚えますが、広範囲で暗躍するSHOCKERの情報を得るためには政府と情報機関の協力がある方がリアリティがあるのかもしれません。それにしても、政府と情報機関の男が「タチバナ」と「タキ」と名乗ったのは、彼らが立花藤兵衛や滝和也のような立場になるということでしょうか?(パンフレットに掲載されたインタビューによると、竹野内豊は自分が演じた政府の男が本名を名乗ったかは謎と語っていますが…)
最後になりますが、『シン・仮面ライダー』の最大の特徴の一つはマスクの扱いだと思います。
本郷が改造人間の力と引き換えに人間性を失うことを避けるために度々マスクを外します。緑川博士はベルトのプラーナ強制排除補助機構で人間に戻ることを本郷に教えますが、この設定は何となく『仮面ライダーW』を思わせます。
『仮面ライダーW』では、ガイアメモリと呼ばれるUSBメモリ型の端末でライダーも敵も変身します。敵がガイアメモリの毒性や中毒性に浸食されるのと対照的に主人公はダブルドライバーと呼ばれるベルトでガイアメモリの毒素を排除した状態での変身が可能になっていました。
そう考えると、本郷の精神を宿したマスクを装着した一文字は、仮面ライダーWの左翔太郎とフィリップのように二人で一人という文字通りダブル(W)ライダーとして活躍することになるのでしょうか?
どうなるのか現時点では予測不可能ですので、今は妻と再び劇場へ見に行ける日を楽しみにしています。
(敬称略)
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二度目の鑑賞(2023年4月21日 追記)
4月20日(木)、妻の希望で『シン・仮面ライダー』を再び見に行きました。
作品そのものの感想は初見のときとほぼ同じです。
二度目の鑑賞でしたので、初見で見逃した細部に注意を払いましたが、目まぐるしいカット割りと早口の台詞が多いので、やはり全てを把握するには至りませんでした。
とは言え、幾つか興味深い点もありました。
本郷の父親を刺殺した犯人を演じていた安田顕を目を凝らしてみましたが、やはり顔はよく見えませんでした(苦笑) その代わり、意識して聞くと、絶叫する声は紛れもなく安田顕だと分かりました。
ハチオーグとの戦闘も夜でしたので、よく見えない部分がありましたが、腹部を刺された本郷がとどめのキックをハチオーグを避けてビルの壁に当てていたのが、やっと分かりました。それにしても、テレビ版の初代ライダーは相手が女性(蜂女)でも容赦なくライダーキックでとどめを刺していたのを考えると、改めてテレビ版と今回の本郷猛のキャラの違いが際立つ場面だと思いました。
帰宅後、Amazon Prime Videoで期間限定配信中の「【幕前/第1幕 クモオーグ編 特別公開】『シン・仮面ライダー』」を視聴しました。
先ず思ったのは、劇場で見るより細部が見やすかったことです。
仮面ライダーとSHOCKER戦闘員との戦闘中に、ルリ子の足に追跡用の小型クモが張り付いていたのも初めて気付きました。
『仮面ライダー』がテレビ番組だったからという訳ではありませんが、『シン・仮面ライダー』も銀幕よりモニター向けの作品なのかもしれないなんて思った次第です。
(敬称略)
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