映画監督 小林正樹 生誕110年 全監督作品を見てあれこれ思ったこと

こんにちは。タムラゲン (@gensan) です。

映画監督 小林正樹 生誕110年 人間の條件 切腹 怪談 上意討ち 拝領妻始末 化石 東京裁判 会津八一 五味川純平 仲代達矢 武満徹 イラスト:タムラゲン Filmmaker Masaki Kobayashi | The Human Condition | Harakiri | Kwaidan | Tatsuya Nakadai | Toru Takemitsu | Illustration by Gen Tamura

イラスト:タムラゲン Illustration by Gen Tamura

今日は、映画監督 小林正樹の誕生日です。

『人間の條件』、『切腹』、『怪談』等の重厚な大作で国内外から高い評価を得て、黒澤明 (1910-1998) と並ぶ世界的な巨匠です。今年で生誕110年を迎えましたので、全監督作品を振り返って、その偉業を偲びたいと思います。

 

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略歴

小林正樹は、1916年2月14日、北海道小樽市に生まれました。

早稲田大学文学部哲学科で會津八一 (1881-1956) に東洋美術を師事しました。卒業後、松竹大船撮影所に助監督として入社。1942年、応召され、満州に渡ります。宮古島で敗戦を迎えた後も、翌年まで沖縄本島嘉手納捕虜収容所での米軍の労働要員にされます。

復員後、松竹に復職。木下惠介 (1912-1998) の助監督となります。1952年に『息子の青春』で監督デビュー。やがて松竹の社風から離れて、戦争や社会問題を扱った『壁あつき部屋』、『あなた買います』、『黒い河』などの問題作を撮っていきます。

そして、小林の映画作家としての地位を確立したのが、反戦映画『人間の條件』です。五味川純平 (1916-1995) のベストセラー小説を原作とした、全3作で上映時間の合計が9時間38分の超大作です。主人公の梶には、当時殆ど無名であった仲代達矢 (1932-2025) が大抜擢され、この映画が国内外で成功したことによって一躍スターとなりました。

続いて撮った時代劇『切腹』、『怪談』、『上意討ち ―拝領妻始末―』が、カンヌやヴェネチアの映画祭で受賞して海外の批評家からも激賞されました。1971年には、カンヌ国際映画祭25周年記念として世界10大監督の1人として功労賞を受賞して、小林は世界的な巨匠の仲間入りを果たしました。その後も、『化石』や『東京裁判』などの大作を撮りました。

1996年10月4日、没。

 

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監督作品(公開順)

息子の青春(1952年)

Youth of the Son
1952年6月25日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、44分

製作:山本武
原作:林房雄
脚色:中村定郎
撮影:高村倉太郎
音楽:木下忠司
美術:中村公彦
出演:三宅邦子、北龍二、石濱朗、小園蓉子、笠智衆

2018年6月7日、DVDで鑑賞しました。

初監督作品のせいか、後年の重厚な戦争映画や時代劇とは全く違う朗らかな作風です。石濱朗 (1935-2022) も『人間の條件』や『切腹』の悲劇的な人物とは正反対に天真爛漫で初々しいです。高校生なのに初デートがスーツ姿で歌舞伎鑑賞なのが時代を感じさせます。如何にも松竹的な家族愛の話です。

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まごころ(1953年)

Sincere Heart
1953年1月29日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、94分

製作:久保光三
脚本:木下惠介
撮影:森田俊保
音楽:木下忠司
美術:平高主計
出演:田中絹代、 津島惠子、高橋貞二、石浜朗、三橋達也、淡路惠子、野添ひとみ

2018年8月29日、DVDで鑑賞しました。

序盤は良家の受験生の天真爛漫ぶりに赤面しますが、隣の安アパートに越してきた肺病の少女がダニのような叔父のせいで命を縮めてしまう辺りから演出が白熱します。松竹的な作りに時代を感じますが、何不自由なく育った青年が社会の不条理に打ちのめされる話は普遍的かもしれません。

敗戦からまだ8年しか経っていない頃の話ですので、主人公が慕うラグビー部の顧問は恋人を空襲で亡くしています。主に1960年代の東宝映画でしか三橋達也 (1923-2004) を見ていませんでしたので、この時代の二枚目ぶりが新鮮です。津島惠子 (1926-2012) は『七人の侍』(1954) の村娘より都会的な現代劇の方がよく似合うと思います。

肺病の少女が十分な治療を受けられないのは金銭的な理由ですが、彼女の姉は金銭を搾取する叔父から逃れてきたので、そもそもの原因はこの叔父です。映画では簡単に追い払われましたが、所謂「毒親」などの悪質な親族も、経済格差と同様に、現代に通じる問題だと思います。

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三つの愛(1954年)

Three Loves
1954年8月25日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、114分

製作:久保光三
脚本:小林正樹
撮影:井上晴二
音楽:木下忠司
美術:平高主計
出演:山田五十鈴、岸惠子、三島耕、伊藤雄之助

2018年9月9日、DVDで鑑賞しました。

大人の都合に翻弄される少年と知的障害の少年との友情は割と良く描けていますが、他の要素を盛り込み過ぎた印象です。ラストの悲劇も唐突です。神父役の伊藤雄之助 (1919-1980) をはじめ、出演者は皆好演していて、演出も端正なのに、散漫で重苦しい脚本で損しています。

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この広い空のどこかに(1954年)

Somewhere Beneath the Wide Sky (Somewhere Under the Broad Sky)
1954年11月23日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、109分

製作:久保光三
脚本:楠田芳子
潤色:松山善三
撮影:森田俊保
音楽:木下忠司
出演:佐田啓二、久我美子、高峰秀子、石濱朗

2017年10月24日、DVDで鑑賞しました。

松竹ホームドラマの佳作です。戦争で傷を負った人達の悩みもさり気なく描かれ、敗戦後10年足らずの物語だと実感します。家族の中で孤立しそうになる長男の妻も最後には皆と仲良く暮らせるようになりますが、現実は映画のように甘くないのではとも思います。

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美わしき歳月(1955年)

The Beautiful Years (Beautiful Days)
1955年5月25日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、125分

製作:久保光三
脚本:松山善三
撮影:森田俊保
音楽:木下忠司
美術:平高主計
出演:久我美子、 木村功、佐田啓二、織本順吉、田村秋子、小沢栄

2023年3月9日、DVDで鑑賞しました。

1955年の映画ですので、善人が多い爽やかな青春群像の中にも戦争の後遺症が随所に見えます。老カップルの台詞の中に「新憲法」が出てくるのも時代を感じます。不景気やパワハラ上司などは昔も今も同じだと痛感します。それから、木村功 (1923-1981) は一人で悩みすぎだと思います。

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泉(1956年)

Fountainhead (The Spring)
1956年2月26日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、129分

製作:桑田良太郎
原作:岸田國士
脚色:松山善三
撮影:森田俊保
音楽:木下忠司
美術:平高主計
出演:佐分利信、有馬稲子、佐田啓二、渡辺文雄、内田良平、桂木洋子

2023年4月14日、DVDで鑑賞しました。

恋愛劇と社会派要素を融合させた意欲作ですが、全体的には恋愛要素が多めです。有馬稲子 (1932- ) は好演ですが、煮え切らない有馬と佐田啓二 (1926-1964) にイライラしてしまいます。木下忠司 (1916-2018) の音楽も大袈裟過ぎです。佐分利信 (1909-1982) が打ち明け話をする場面でマイクが一瞬見えていました。1950年代の和歌山ロケの映像は美しいです。

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壁あつき部屋(1956年)

The Thick-Walled Room (Room With Thick Walls)
1956年10月31日 公開
新鋭プロダクション 製作
松竹 配給
モノクロ、スタンダード、110分

製作:小倉武志
原作:『壁あつき部屋―BC級戦犯の手記』(理論社)
脚色:安部公房
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司
美術:中村公彦
出演:三島耕、浜田寅彦、岸惠子、小林トシ子、小沢栄、信欣三、伊藤雄之助

2017年11月14日、DVDで鑑賞しました。

『壁あつき部屋』が撮られたのは1953年でしたが、実際に公開されたのは3年後の1956年でした。松竹が米国に忖度したためです。公開が3年も遅れてしまったことを、小林正樹は時期を失すると心配したそうです。それでも、部下に罪を擦り付ける上官や、日本に再軍備を迫る米国や、朝鮮半島の南北間の緊張などの問題は、敗戦から81年目を迎えた今も色褪せていないと思います。現代だからこそ再評価されるべき力作です。

戦争という題材や、受刑者が幻覚を見る場面の超現実的な美術やカメラアングルなど、監督デビューの翌年に撮った3作目で小林正樹は既に後年の大作に繋がる独自の作風をほぼ確立していました。

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あなた買います(1956年)

I Will Buy You
1956年11月21日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、113分

企画:小梶正治
原作:小野稔
脚本:松山善三
撮影:厚田雄春
音楽:木下忠司
出演:佐田啓二、岸惠子、大木実、伊藤雄之助、水戸光子、東野英治郎

2001年2月15日、レンタルビデオ (VHS) で鑑賞しました。拙記事執筆のため、2026年1月2日、DVDで四半世紀ぶりに再見しました。

ドラフト制度が無かった頃のプロ野球スカウトを巡る人間たちの醜い欲望を描いた作品です。

大学野球の有望選手である栗田五郎(大木実 1923-2009)を狙うスカウトマンの岸本大介(佐田啓二)は、栗田の実家がある高知県まで幾度も飛行機で足を運び、その家族を懐柔しようとします。栗田の長兄・為吉(三井弘次 1910-1979)に会った岸田は、粗野で強欲な為吉を心の中で「ゴジラ」だと形容します。『あなた買います』が公開された年の前年と前々年にゴジラ映画が立て続けに大ヒットを飛ばしたばかりとは言え、小林正樹の映画にまでゴジラの名前が出てくることに驚きます。

又、映画の後半で高知を訪れた谷口笛子(岸惠子 1932- )が降りた後免駅の駅名に聞き覚えがあると思いましたら、2025年のNHK連続テレビ小説『あんぱん』に登場した「後免与駅」のモデルでした。(ドラマ自体は凡作でしたが)

スポーツ映画は数あれど、こうした野球界の内幕に迫った映画は珍しいです。1965年以降、プロ野球の新人選手獲得はドラフト制度となりましたが、幾度も問題が発生しています。スカウト以前に、2025年に問題となった広島・広陵高の暴力事件など数多くのように暴力的な不祥事が後を絶たないのを見ると、スポーツと人格形成が全く無関係であるのは明白です。(もっとも、これは映画を含む芸能界など、どの分野も似たり寄ったりでしょうが)

ともあれ、小林正樹が師の木下惠介的なホームドラマから本格的な社会派へと脱皮する過程の一作として一見の価値はあります。

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黒い河(1957年)

Black River
1957年10月23日 公開
松竹大船
モノクロ、スタンダード、115分(1963年の映倫審査後、現在は110分版)

企画:にんじんくらぶ
製作:桑田良太郎
原作:富島健夫
脚色:松山善三
撮影:厚田雄春
美術:平高主計
音楽:木下忠司
録音:西崎英雄
照明:須藤清治
編集:浜村義康
出演:有馬稲子、渡辺文雄、仲代達矢、山田五十鈴、桂木洋子、淡路惠子

2000年3月4日、レンタルビデオ (VHS) で鑑賞しました。拙記事執筆のため、2026年1月3日、DVDで約26年ぶりに再見しました。

何と言っても、小林映画に初出演した仲代達矢が演じる人斬りジョーの存在感が圧倒的です。

本来なら静子(有馬稲子)を慕う大学生の西田(渡辺文雄 1929-2004)の方が主人公として扱われる筈なのですが、ジョーの方が目立ってしまうのは、黒澤明の『酔いどれ天使』(1948) で主人公の医師・真田(志村喬 1905-1982)よりヤクザの松永(三船敏郎 1920-1997)の方が目立ってしまったのと似ています。事実、黒澤映画における三船敏郎のように、仲代達矢は小林映画の顔ともいうべき存在になっていきました。

もっとも、私見ですが、渡辺文雄も真面目な大学生というよりは、ふてぶてしい大人に見えていましたので、西田役に合っていたのか疑問に思います。その後の渡辺がヤクザ映画で悪役を多く演じることを知らなかった私でも、『ウルトラQ』(1966) 第15話「カネゴンの繭」のヒゲおやじや、『ウルトラセブン』(1967-1968) 第45話「円盤が来た」の金子源のような意地悪な役のイメージが強かったのも影響しているかもしれません。大島渚の『少年』(1969) でも嫌な父親役でしたし。

そのせいか、久しぶりに再見すると、初見では不可解だった静子の心理よりも、彼女に対する西田の言動が思っていたより意固地だったのに驚きました。

静子はジョーに手籠めにされてしまったことを西田に打ち明けますが、西田は「君はなぜ警察へ訴えなかったんだ」と彼女を非難します。ですが、この映画から約70年経った21世紀の今でも、性犯罪の被害女性が真相を打ち明けるのは心身ともに苦痛でしかありませんし、勇気を振り絞って警察に訴え出たとしても、警察官(大抵は男性)から非難されることすらあるのです。そのような理不尽な社会で、静子を責めるのは酷というものです。

そして、月光荘の関係者たちのキャラの濃さにも目を見張りました。初見時は、金賢順(宮口精二 1913-1985)しか記憶に残りませんでしたが、今回の視聴では、家主の幹子(山田五十鈴 1917-2012)を筆頭に、住民の一人一人の泥臭い個性が執拗なほど丹念に描かれていることに感心しました。

栗原(東野英治郎 1907-1994)が「暑いねえ。35度だってね」と言っていましたが、群馬県高崎市で最高気温41.8℃を記録した2025年の酷暑を振り返りますと、近年の温暖化で私達の感覚が麻痺したのを痛感します。

ジョーの一味が月光荘の住人と同じハンコを使って立ち退き同意書に捺印するのは、言うまでもなく有印私文書偽造罪という違法行為です。それ以前にも愚連隊は騒音や恐喝という違法行為を繰り返していましたが、捺印の偽造は特に悪質だと思いました。村役場の課長も容易く騙されたように、日本のハンコ文化の問題を赤裸々に描いた稀有な場面だと思います。

幹子と結託して月光荘の取り壊しを企んだ黒木(清水将夫 1908-1975)は、自分のことを「ゴジラだよ」と言います。『ゴジラの逆襲』(1955) で田所博士を演じた清水将夫にゴジラを名乗らせる楽屋落ちもさることながら、『あなた買います』に続いて、ゴジラの名前が再び小林映画に出ることに驚かされます。それほどゴジラは理不尽な暴力の代名詞として既に一般的に浸透していたのでしょうか。或いは、小林正樹が密かにゴジラに興味があったとか(笑)

ともあれ、約四半世紀ぶりに視聴した『黒い河』は、米軍基地という現代も続く問題など社会の暗部に正面から向き合う硬派な作風に仲代達矢という稀代の俳優が加わったことによって、小林正樹の作風が確立した記念碑的な作品であると改めて思いました。

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人間の條件 第一部 純愛篇/第二部 激怒篇(1959年)

The Human Condition Part I: No Greater Love
1959年1月15日 公開
文芸プロダクションにんじんくらぶ 企画
歌舞伎座プロダクション 提供
松竹映画
モノクロ、シネマスコープ、206分

原作:五味川純平
脚色:松山善三、小林正樹
撮影:宮島義勇
美術:平高主計
録音:西崎英雄
音楽:木下忠司
照明:加藤隆司
編集:浦岡敬一
助監督:今井雄五郎
中国語監修:黎波
中国語指導:陳源昌
レリーフ作成:佐藤忠良
字幕監修:清水俊二
出演:仲代達矢、新珠三千代、淡島千景、有馬稲子、佐田啓二、山村聰、石濱朗、南原伸二、宮口精二、安部徹、三島雅夫、小沢栄太郎、三井弘次、河野秋武、中村伸郎、山茶花究、東野英治郎、永田靖、小杉義男、芦田伸介

五味川純平の同名ベストセラー小説を映画化した小林正樹渾身の三部作の幕開けです。この映画の大成功によって、仲代達矢は一躍スターの座を駆け上がっていきました。

私が『人間の條件』全六部を初めて鑑賞したのは、1989年11月18日 (第一部、第二部)、19日 (第三部から第六部) に見たレンタルビデオ (VHS) でした。偶然にも、この年の11月19日は『人間の條件 第三部、第四部』の公開30周年の前日でした。

当時はまだ子供でしたので、壮絶な内容に打ちのめされながら約9時間半余りを一気に見終えました。この数日前に『切腹』(1962) を見て生涯最強クラスの衝撃を受けていましたので、小林正樹は黒澤明と並んで私が最も尊敬する映画監督の一人となりました。

『人間の條件』は辛い内容ですので長い間もう一度見るのを躊躇していましたが、公開60周年を迎えた2019年にDVDをレンタルしました。

まだ日本と中国の間に国交が無かった頃の映画ですので、全て日本国内での撮影です。宮島義勇 (1909-1998) の厳格なシネスコ撮影が北海道ロケを満州の広大な大地に見せていることに改めて驚嘆しました。因みに、老虎嶺鉱山の場面は秋田県の小坂鉱山で、坑内の場面は岩手県の松尾鉱山でのロケでした。

ただ、主な出演者が日本人の俳優ばかりでしたので、中国語の発音は中国人本来の発音からは程遠いものだったそうです。(これは『人間の條件・完結篇』のロシア語も同様に不完全なものだという指摘があります)小林によると、中国人が聞いても違和感なく喋れていたのは、楊春蘭役の有馬稲子だけだったそうです。

現在、大阪大学で日中映画交流史を研究している劉文兵によりますと、小林正樹の演出による中国人の描写も、従来の日本映画で描かれたステレオタイプな中国人像と大差ないものだそうです。(『映画監督 小林正樹』岩波書店)又、戦時中の日本による加害性を批判した内容とは言え、大半の中国人が卑屈な人物として描かれたことも『人間の條件』が中国本土で長い間、上映されなかった一因かもしれないとも劉は推測しています。

外国映画で描かれる日本人の描写が無知と偏見に満ちたものであるのは確かに問題ではありますが、逆に日本で外国人を描くことも同じように容易でないことも考えさせられます。市川崑 (1916-2008) が1956年と1985年に映画化した『ビルマの竪琴』も、原作者の竹山道雄 (1903-1984) がビルマ(現ミャンマー)を訪れたことがなかったので、ミャンマーの人たちから見れば違和感だらけだそうですし。(「ミャンマーの人々は「ビルマの竪琴」をどう観たか(後編)」「『ビルマの竪琴(たてごと)』 から卒業しよう!―日本人に求められるミャンマーの文化と人々への等身大の理解」)

とは言え、実際に軍隊と捕虜という過酷な体験をしてきた小林正樹だからこそ迫真の反戦映画となったことも事実です。敗戦から80年以上経った今も、軍国主義の日本による東アジアでの蛮行を否定する勢力が後を絶たないことを考えると、『人間の條件』は時代を超えて見られるべき大作だと思います。

余談ですが、2021年6月、クライテリオン・コレクションのBlu-rayを購入しました。

クライテリオン盤を視聴して驚いたのは、第一部が終わった後に約3分の休憩音楽が収録されていたことです。しかも、第二部の開幕には第一部と同じオープニングのクレジットタイトルがありました。どちらも松竹のDVDには収録されていませんでしたが、劇場で上映されるフィルムにはあったことでしょうか。岩波書店の『映画監督 小林正樹』にも第一部・第二部の上映時間は203分と表記されていましたが、クライテリオン盤が全長版だとすると第一部・第二部の本当の上映時間は206分ということになります。

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人間の條件 第三部 望郷篇/第四部 戦雲篇(1959年)

The Human Condition Part II: Road to Eternity
1959年11月19日公開
人間プロダクション・松竹映画
モノクロ、グランドスコープ、185分

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人間の條件 完結篇 第五部 死の脱出篇/第六部 曠野の彷徨篇(1961年)

The Human Condition Part III: A Soldier’s Prayer
1961年1月28日公開
文芸プロダクションにんじんくらぶ 製作
松竹映画
モノクロ、グランドスコープ、190分

『人間の條件 完結篇 第5部・死の脱出 第6部・曠野の彷徨』公開60周年 監督:小林正樹 主演:仲代達矢 Masaki Kobayashi's The Human Condition Part 3: A Soldier's Prayer

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からみ合い(1962年)

The Inheritance
1962年2月17日 公開
文芸プロダクション にんじんくらぶ 製作
松竹 配給
モノクロ、シネマスコープ、108分

『からみ合い』(1962) 監督:小林正樹 原作:南條範夫 音楽:武満徹 出演:岸惠子、仲代達矢 THE INHERITANCE (1962) Directed by Masaki Kobayashi / Music by Toru Takemitsu / Cast: Keiko Kishi and Tatsuya Nakadai イラスト:タムラゲン Illustration by Gen Tamura

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切腹(1962年)

Harakiri (Hara-Kiri)
1962年9月16日公開
松竹株式会社 製作・配給
モノクロ、シネマスコープ、135分

『切腹』 (1962) 監督:小林正樹 音楽:武満徹 出演:仲代達矢 三國連太郎 | HARAKIRI (1962) Directed by Masaki Kobayashi / Music by Toru Takemitsu / Cast: Tatsuya Nakadai and Rentaro Mikuni  イラスト:タムラゲン Illustration by Gen Tamura

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怪談(1965年)

Kwaidan
1964年12月29日 先行公開 (有楽座)
1965年1月6日 一般公開
文芸プロダクションにんじんくらぶ 製作
東宝 配給
カラー、シネマスコープ、183分

映画『怪談』 原作:小泉八雲 監督:小林正樹 脚本:水木洋子 撮影:宮島義勇 音楽:武満徹 琵琶:鶴田錦史 出演:三國連太郎 新珠三千代 仲代達矢 岸惠子 中村嘉葎雄 丹波哲郎 田中邦衛 中村翫右衛門 滝沢修 杉村春子 中村鴈治郎 イラスト:タムラゲン | KWAIDAN directed by Masaki Kobayashi based on the stories by Lafcadio Hearn. Music by Toru Takemitsu | Illustration by Gen Tamura

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上意討ち ―拝領妻始末―(1967年)

Samurai Rebellion (Rebellion)
1967年5月24日 公開
東宝・三船プロダクション 製作
東宝 配給

モノクロ、シネマスコープ、128分

製作:田中友幸
原作:滝口康彦『拝領妻始末』
脚本:橋本忍
撮影:山田一夫
美術:村木与四郎
録音:奥山重之助
照明:小西康夫
編集:相良久
音楽:武満徹
監督助手:松江陽一
殺陣:久世竜
出演:三船敏郎、仲代達矢、加藤剛、司葉子、神山繁、三島雅夫、市原悦子

1998年3月13日に東宝のレーザーディスクで初めて鑑賞しました。

東宝からビデオ (VHS) から発売されたのは1999年でした。DVDは、同じく東宝から2004年に発売され、その後「東宝DVD名作セレクション」の一本として2015年に廉価版が発売されました。

『上意討ち ―拝領妻始末―』は、『切腹』と双璧をなす小林正樹の傑作時代劇です。主役の三船敏郎も黒澤映画とは一味違う名演を見せてくれます。

『切腹』と『上意討ち』の成功は、橋本忍 (1918-2018) の優れた脚本に依る所が大きいです。同時に、それは滝口康彦 (1924-2004) の原作が優れているということでもあります。ただ、この点で両作品には映画としての出来に少し差が出てしまったと思います。

『切腹』が『異聞浪人記』に沿う構成で緊張感を最後まで保ったのに対して、『上意討ち』の原作『拝領妻始末』は殺陣が無い地味な展開に終始する内容です。派手な立回りが追加されるなど大幅に脚色された映画の後半の展開に少し無理を感じました。この点は池波正太郎 (1923-1990) も手厳しく指摘していました。

『上意討ち』の後半が活劇風に脚色されたのは、三船が主演する三船プロダクションの時代劇ということもあるかもしれません。仲代達矢が演じた映画のオリジナルキャラ浅野帯刀も『椿三十郎』的な決闘を狙っているように見えます。

映画史研究家の春日太一 (1977- ) が、『上意討ち』の脚本制作に関わった田中収 (1935-) にインタビューしたところ、三船と仲代主演の時代劇を作る前提で選んだ小説が『拝領妻始末』に決まったので、橋本忍が仲代の役を新たに作ったそうです。

ともあれ、後半の欠点を差し引いたとしても、『上意討ち』は『切腹』と並ぶ傑作だと思います。それに、私は三船と仲代の大ファンですので、二人の共演だけで評価が甘くなってしまうのです(笑)

余談ですが、出演している三船プロ・七曜会の一人に名を連ねている上西弘次 (1938-?) は、同年放送開始した『ウルトラセブン』で、ウルトラセブンのスーツアクターも担当していました。

『上意討ち』は、名優たちの演技は勿論、滝口康彦の原作を巧みに脚色した橋本忍の見事な脚本、シネマスコープの構図を活かした山田一夫 (1919-2006) の撮影、黒澤映画を数多く手がけた村木与四郎 (1924-2009) による重厚な美術、邦楽器を取り入れた武満徹 (1930-1996) の音楽など全てが第一級の出来です。

又、『上意討ち』と『切腹』両作品の根底に共通するのは、非情な権力への憤りと弱者への温かい眼差し。これらは、現代社会にも通じる普遍的なテーマです。

それは、世界大戦中の残虐行為から東電の原発事故に至るまで続く国家権力の隠蔽体質を見ても、小林の映画が時代劇でありながら現代的な問題を訴えていることが分かります。

日本では、昔から『忠臣蔵』に代表されるような忠義に殉ずる時代劇が好まれてきました。ですが、殉ずる対象が尊敬に値するとしても無用の悲劇なのに、殉ずる対象が虚偽の塊だとしたら更に醜悪な物語でしかありません。

「忠義」に対する疑問について考えていたら、『上意討ち』LDの解説書に映画評論家の佐藤忠男 (1930-2022) が寄稿した文章を思い出しました。

『上意討ち』の初期の英語題名 “Rebellion” は「反乱」を意味します。(現在の英語題名は “Samurai Rebellion”)この点について、佐藤は、日本では「反乱」という言葉は良い意味には受け止めてもらえないと指摘していました。又、実際の日本の歴史では、武士の反乱は武門の名誉の為のものだったとも。

佐藤は、小林正樹はあえて『人間の條件』のように『上意討ち』を、武士道の為ではなく家族愛など人道的な理由で反乱を起こす理想像として描いた、と書いていました。

ですが、過去の日本には人道的な理由で権力に抵抗した武士は本当にいなかったのでしょうか?

私が知る限りでは、江戸時代に武士が人道的な理由で起こした反乱は、大塩平八郎の乱 (1837年) くらいです。これ程の規模でなくても、他に個人的なレベルでの反乱はあったのでしょうか。それとも、やはり映画のように歴史の闇に葬られたのでしょうか。

そういえば、日本では「反乱」が良く思われないという指摘で更に連想したことが…。

以前、『スター・ウォーズ』(1977) の Rebel Alliance を日本では「反乱軍同盟」ではなく「同盟軍」と訳すのはおかしいと指摘していた人がいました。公開当時の日本人の感覚では、正義の味方の軍団に「反乱」という名称は相応しくないと思われたのでしょうか。

閑話休題。

三船敏郎は黒澤映画以外はダメという風によく語られます。確かに、三船の最高の演技が黒澤映画に集中しているのは否めません。

そうだとしても、個人的には、小林の『上意討ち』は、黒澤映画以外で最も良かった三船主演映画の一本だと思います。小林映画の厳格な構図の中で、三船は抑圧された人間の苦悩と怒りを見事に演じていました。

ところで、映画の内容とは別に、『上意打ち』は、撮影が度々中断したことで小林と三船の仲が一時は険悪になったことも有名です。もっとも、撮影の遅延は、中抜きを拒む小林の粘る演出だけでなく、三船プロのセットの不備や出演者の過密スケジュールにも原因があったようです。

事実、小林正樹は映画俳優としての三船の魅力は認めていて、次のように語っていました。

「役者としての三船さんは、期待していた通りでした。あの人はキャメラを通して見るとすごくいい。それに聞き取りにくくあっても、あのぼそぼそっていう台詞にまた何ともいえない魅力がありました。仲代さんとはまったく対照的ですが、やはりすごい役者です」

『上意討ち』が興行的に成功して国内外で高く評価された後、小林と三船は和解しました。もし、その後も三船が小林映画に出演していれば、黒澤・三船コンビとは一味違った名作が更に産まれて、彼のキャリアももっと充実したものになっていたのではと惜しまれます。

尚、『上意討ち ―拝領妻始末―』は、テレビドラマとして2回リメイクされて、1992年と2013年に放送されました。

映画 (1967) ドラマ (1992) ドラマ (2013)
スタッフ
監督 小林正樹 高瀬昌弘 藤田明二
脚本 橋本忍 吉田剛 橋本忍
音楽 武満徹 丸谷晴彦 加古隆
キャスト
笹原伊三郎 三船敏郎 加藤剛 田村正和
笹原すが (妻) 大塚道子 大谷直子 梶芽衣子
笹原与五郎 (長男) 加藤剛 船越英一郎 緒形直人
笹原いち 又はお市 (藩主側室・与五郎妻) 司葉子 渡辺典子 仲間由紀恵
笹原文蔵 (次男) 江原達怡 石黒英雄
笹原堅物 (義父) 佐々木高丸 武内亨 津川雅彦
刈谷きく (とみの乳母) 市原悦子 田畑智子
塩見兵右衛門 (お市の父) 浜村純 中谷一郎 西田健
松平正容 (藩主) 松村達雄 大杉漣
お玉 (新しい側室) 小林哲子 逢沢りな
高橋外記 (側用人) 神山繁 近藤洋介 北村有起哉
柳瀬三左衛門 (家老) 三島雅夫 橋爪功
小谷庄兵衛 (馬廻組組長) 青木義朗 笹野高史
浅野帯刀 (国廻り支配) 仲代達矢 松平健

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日本の青春(1968年)

Hymn to a Tired Man (Youth of Japan)
1968年6月8日 公開
東京映画 製作
東宝 配給

モノクロ、シネマスコープ、130分

製作:佐藤一郎、椎野英之、佐藤正之
原作:遠藤周作『どっこいショ』
脚本:廣澤榮
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
照明:榊原庸介
美術:小島基司
録音:原島俊男
編集:諏訪三千男
出演:藤田まこと、新珠三千代、黒沢年男、酒井和歌子、佐藤慶、田中邦衛、奈良岡朋子

2017年7月12日(水)、「小林正樹映画祭」を開催していたシネ・ヌーヴォ (大阪・九条) にて初めて鑑賞しました。

実は、7月11日と12日は、『人間の條件』の上映に合わせて、主演の仲代達矢がシネ・ヌーヴォに緊急来場して舞台挨拶もして下さりました。

この日も、『人間の條件・完結篇』の上映後に、劇場のロビーで待つ私達も、仲代の舞台挨拶を聴く僥倖に恵まれました。当時の仲代は84歳でしたが矍鑠としていて改めて驚かされました。

『人間の條件・完結篇』のラストの撮影のため、6日間もの徹夜・絶食を小林に命じられたことや、凍死寸前までいったことなど過酷な撮影の裏話が聞けました。(仲代は、キャメラの宮島義勇を「みやじま・ぎゆう」と発音していました)

戦後70年以上経った今も世界で戦争が絶えないことや日本の右傾化に対する懸念も仲代は抱いていました。更に、当時公開中の映画『海辺のリア』や、能登演劇堂にて公演予定だった『肝っ玉おっ母と子供たち』に込めた反戦の思いも熱く語っていました。

帰りの新幹線の時間が迫っていたので、仲代は、満員の観客からの拍手を浴びながら退場。タクシーに乗って去るのを観客とスタッフの皆で見送りました。

その後、シネ・ヌーヴォに再入場。約10分遅れで『日本の青春』の上映開始。

『日本の青春』は、平凡な中年男の悲喜劇とは言うものの、そこは小林正樹、いきなり冒頭から凄い映像を見せてくれます。

通勤電車の左右から蟻のようにワラワラと水中に墨汁が広がるように乗客が出てくる場面だけで圧倒されました。(しかも、電車は小刻みに揺られていますし)

小林正樹は、この映画を遠藤周作 (1923-1996) の原作と同じ『どっこいショ』という題名にしたかったので、会社によって付けられた『人間の青春』という題名には不満があったそうです。

主人公の向坂善作(藤田まこと 1933-2010)が特許事務所のデスクに座るのに合わせて『どっこいショ』と大きくタイトルが出て、スタッフとキャストが一通り出終わった後、付け足すかのように学徒出陣の映像に『日本の青春』のタイトルが出るところに小林のこだわりを感じます。

日本の街が汚らしいという理由もあってカラー映画を撮ろうとしなかった小林でしたが、『日本の青春』の白黒映像で見る約半世紀前の日本人の生活は色々と細部が興味深いです。5千円札がまだ聖徳太子で、屋台の中華そばが一杯70円だったりします。

劇中で「戦争から23年」と何度も言われますが、敗戦から81年目を迎えた今も、小林の映画は戦争と個人の関係を問いかけてくるように思えます。

「戦争と個人」が映画のテーマですが、召集を受けた大野(田中邦衛 1932-2021)が「俺達をこんなに惨めにする国家って一体何なんだ」と言っていたように「国家と個人」でもあり、芳子(新珠三千代 1930-2001)が「現実が私達を何度も踏みにじる」と言っていたように「現実と個人」でもあるのだと思います。

又、新珠三千代、田中邦衛、佐藤慶 (1928-2010) が出演しているせいか、『日本の青春』は同じ小林正樹の『人間の條件』の後日談みたいにも見えるときがあります。

もっとも、藤田まことの向坂は仲代達矢の梶より気弱ですし、新珠三千代の芳子も美千子より打算的という人物造形がより現実的で悲哀を感じさせます。田中邦衛はまたもや戦争で落命する役ですが、この頃になるとさすがに学生役は苦しいかも(苦笑)

そして、佐藤慶が向坂の戦時中の元上官・鈴木というのは知っていましたが、実際に見ると、やはり最凶に不快な悪役でした。聴力を失うほど向坂を殴打しておきながら、戦後の鈴木は経済力にものを言わせて向坂を平然と蔑んでいます。被害者はいつまでも苦しんでいるというのに、加害者は自分の悪事をケロリと忘れてのうのうと生きているという現実の縮図そのものです。

『日本の青春』で極悪人を演じた佐藤慶は、小林の次作『いのち・ぼうにふろう』では正反対に「生き仏」の異名を持つ善人を演じるのですが、あの眼と声だと…(汗) いや、佐藤慶は名優ですし、人を見かけで判断してはいけないのですが、やはり大島渚の映画のような極悪人のイメージが強すぎて…

これは、三船敏郎が『酔いどれ天使』のヤクザの後に『静かなる決闘』の医師を、山﨑努 (1936- ) が『天国と地獄』の誘拐犯の後に『赤ひげ』の善人を演じたものの、前者より印象が薄いようなものかもしれません。三船も、山﨑も、佐藤慶も、そして仲代達矢もアクが強いので善人よりは一癖あるキャラが似合うような気がします。

閑話休題。

『日本の青春』の脚本を執筆した廣澤榮 (1924-1996) は、遠藤周作の原作を数時間で読み終えて、主人公の向坂がまるで自分のように見えたほど共感したそうです。1943年、東條内閣が在学徴集延期臨時特例を公布したため、文科系の大学を受験するという夢を打ち砕かれた経験のある廣澤は、戦争を絶対に肯定しない強いモラルを持って「時流にのって歴史を捩じまげるような仕事をしてはならない」と書いていました。(『廣澤榮・映画シナリオ集』宝文館出版)

個人の発明が兵器として戦争で悪用される危機感を描いた『日本の青春』が公開された1968年は、ベトナム戦争の真っ最中でした。

1967年に「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した日本学術会議が、今では自民党など右派勢力から執拗に攻撃され解体の危機に瀕しています。一方、文科省や経産省などの民生用の研究開発を軍事面に応用するための予算が増額されました。

その上、2025年に首相となった高市早苗 (1961- ) は、非核三原則を邪魔扱いする極右的な人物で、総理大臣補佐官の尾上定正 (1959- ) は「核保有」発言までしました。日本が再び戦争に向かいかねない状況は、『日本の青春』が公開された58年前よりも悪化しそうにすら見えます。

戦中派の向坂は悩みながらも、戦後派の息子・廉二(黒沢年雄 1944- )とその恋人・真理子(酒井和歌子 1949- )に希望を託すような形で映画は締めくくられます。(現在の黒沢年男は右傾化してしまいましたが…)

音楽は、『からみ合い』以来、小林映画には欠かせない武満徹です。純音楽の前衛的な響きとは正反対に情緒溢れる優しい響きのメロディーが印象的です。思ったよりメインテーマが多用されていましたが、エンディングでは心に染み渡るように響いてきたのは流石だと思いました。

劇場を出た後、暑さだけでなく、冷めやらぬ感動と興奮で汗だくになりながら、向坂のように夕陽を背に私は帰路につきました。

ところで、『日本の青春』は現在もソフト化されていません。小林正樹の生誕100年だった2016年にも、東宝は『いのち・ぼうにふろう』だけ初DVD化して『日本の青春』を無視していました。巨匠に対するこのぞんざいな扱いは、映画会社とは思えない怠慢です。

現在は、アマプラで視聴できるようになっています。

日本の青春』(Amazon Prime Video)

配信というところが時代を感じさせますが、ネットがあれば容易に視聴できるようになっただけでもマシと言うべきでしょうか。それでも、やはり小林正樹の映画なのですから、ソフト化もすべきです。

戦後80年を過ぎて日本が再び軍拡に向かいつつある今だからこそ、小林正樹や廣澤榮たち戦中派の反戦の願いが込められた『日本の青春』は再評価されるべきだと思います。

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いのち・ぼうにふろう(1971年)

Inn of Evil
1971年9月11日 公開
東宝・俳優座 製作
東宝 配給
モノクロ、シネマスコープ、121分

『いのち・ぼうにふろう』(1971) 監督:小林正樹 原作:山本周五郎 音楽:武満徹 主演:仲代達矢 INN OF EVIL (1971) Directed by Masaki Kobayashi / Music by Toru Takemitsu / Cast: Tatsuya Nakadai イラスト:タムラゲン Illustration by Gen Tamura

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化石(1975年)

The Fossil
1975年10月4日 公開
俳優座映画放送・四騎の会 製作
東宝 配給

カラー、スタンダード、201分(劇場公開版)※217分尺のディレクターズ・カット版も現存

製作:佐藤正之、岸本吟一、上岡裕
原作:井上靖
脚本:稲垣俊、よしだたけし
撮影:岡崎宏三
音楽:武満徹
録音:奥山重之助
照明:大西美津男
編集:浦岡敬一
出演:佐分利信、岸惠子、井川比佐志、山本圭、栗原小巻、小川真由美

2017年11月24日、DVD (201分版) で初めて鑑賞しました。

最初は加藤剛 (1938-2018) の饒舌なナレーションと井川比佐志 (1936- ) のお喋り社員が邪魔だと感じましたが、佐分利信が演じる社長が自分の癌を知る辺りから一転、ぐいぐい引き込まれる展開となりました。内省的な物語と静謐な映像が約3時間半も続きますが、意外と苦にならず結末まで一気に見れました。

『化石』は元々テレビ・ドラマでしたが、テレビ放送版は現存しないのでしょうか?考えてみれば、小林正樹のテレビ映画とは贅沢な番組です。小林がテレビ嫌いというのもありますが、内省的な物語と武満徹の静謐な音楽が相俟って実に格調高い作品となっています。原作者の井上靖 (1907-1991) が絶賛したのも分かる気がします。

テレビ版は未見ですが、『化石』は武満徹の音楽もさることながら、音響の演出も静謐です。他のテレビ・ドラマなら台詞や音楽で大袈裟に盛り上げるような場面も、冷徹なほどに抑制されています。饒舌なナレーションを除けば、これほど静かで厳格な演出は今のテレビでは殆ど見られないのではないでしょうか。

『化石』の音楽は、実に美しいです。小林正樹の映画では、武満徹は平家琵琶からジャズまで驚くほど多彩な作風を披露しています。作曲だけでなく音響の演出も群を抜いています。いつも思いますが、武満は純音楽より映画音楽の方が断然良いです。

小林正樹の映画らしく『化石』も名優揃いです。主役の佐分利信は勿論、宮口精二も名演。半世紀以上前の映画なので、井川比佐志や栗原小巻 (1945- ) がまだ若く時代を感じます。岸惠子は『怪談』の雪女より妖艶で幽玄。『からみ合い』と並ぶ名演だと思います。

『化石』の出演者で個人的に目を引いたのは、品の良い長女役の小川真由美 (1939- ) です。小林の次作『燃える秋』で奔放な女性を好演していたのを先に見ていたので、見事な変身ぶりに感心しました。

そう言えば、『化石』には、一般的な意味での「悪人」が出てこなかった気がします。それ以前の小林映画『切腹』、『上意討ち』、『いのち・ぼうにふろう』で悪役だった中谷一郎 (1930-2004) や、神山繁 (1929-2017) も本作では二人とも善良な医師を好演していたのが印象的でした。

『化石』にも戦争が影を落とす場面があります。ブルゴーニュ旅行中の主人公は、カフェ Relais Fleurl で、案内人の話を聞きます。ジュラ山脈の山間部の街道に、第二次世界大戦の対ナチスのゲリラ戦で死んだ農民達の墓があります。その近くの断崖にある女神の記念碑には、ルイ・アラゴン Louis Aragon (1897-1982) の OU JE MEURS RENAIT LA PATRIE (われ死するところに祖国よみがえる) という言葉が彫られています。

その説明を聞いて、一鬼太治平 (佐分利信) は独り言のように語ります。「僕は短期間ですが一兵卒として大陸で戦った経験がありますが、人間には色々な死に方がありますね。病気で死ぬ死に方もあれば、戦争で死ぬ死に方もある。僕等のは故郷を守るために戦ったブルゴーニュの農民達と違って、隣の国に押し掛けてやった戦争ですから。『われ死するところに祖国よみがえる』そういう死に方は出来なかったでしょうね。しかし、大勢死んだ」

不治の病で余命僅かなことを知った年配の男性が自分の生きる意味を問い直すという物語は、黒澤明の『生きる』(1952) を連想させます。もっとも、内省的な物語でも劇的な展開と演出だった黒澤に対して、小林は全編に渡って抑制的な演出を貫いています。黒澤に似ていると言われる小林ですが、人生の意味を見つめるような内省的な演出は黒澤とは異なる小林の個性だと思います。

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燃える秋(1978年)

Glowing Autumn
1978年12月23日 ロードショー公開
1979年1月20日 公開
三越・東宝映画 製作
東宝 配給

カラー、ビスタビジョン、137分

企画:岡田茂(三越)
製作:藤本真澄、佐藤正之、安武龍
原作:五木寛之
脚色:稲垣俊
撮影:岡崎宏三
美術:村木忍
録音:西崎英雄
照明:小島正七
編集:浦岡敬一
音楽:武満徹
主題歌:《燃える秋》唄:ハイファイセット 作詞:五木寛之 作曲:武満徹
出演:真野響子、佐分利信、北大路欣也、小川真由美、上条恒彦、三田佳子、芦田伸介、井川比久志

五木寛之 (1932- ) の同名原作の映画化を企画したのは当時の三越社長であった岡田茂 (1914-1995) です。1982年の三越事件というスキャンダルのため、『燃える秋』は今もソフト化されていません。

2017年、シネ・ヌーヴォの「小林正樹映画祭」にてフィルム上映されましたので、同年7月15日、日帰りで大阪まで見に行きました。

うーむ、結論から言うと、イラン・ロケの映像や武満徹の音楽など良い点もあるのですが、映画そのものの出来と言うと複雑な心境です。

『燃える秋』の内容は、主人公・桐生亜希(真野響子 1952- )が、親子ほど年の離れた影山良造(佐分利信)の官能的な呪縛から逃れようと足掻き、若く情熱的な岸田守(北大路欣也 1943- )との愛に揺れるというもの。それにしても、マックス・エルンスト Max Ernst (1891-1976) の展覧会で初老の男が若い女性をナンパして愛人にするなんて、2017年に大炎上した某雑誌みたいです(汗)

正直に言いますと、前半は、昼ドラみたいな亜希の懊悩よりも、亜希の親友・揺子(小川真由美)とその恋人・裕(上条恒彦 1940-2025)の二人の描写の方が面白かったです。ヒロインの道ならぬ恋に気を揉みながらも支えてくれる親友カップルは、何だか矢沢あい (1967- ) の『NANA』の奈々の親友・淳子と京助みたいです。

じれったい展開の前半から一転、亜希がイランに旅立つ後半から映画は少しずつ面白くなります。

影山の幻影から離れ、強引な岸田の求婚を受け入れる亜希ですが、岸田がペルシャ絨毯のデザインをコピーして大量生産しようとすることを知り、幻滅して決別します。

この結末は、女性の自立のみならず、先住民の知的財産権を巡る問題も想起させます。

『燃える秋』は、小林正樹の映画としてはイマイチな出来ですが、主人公の女性が男性への依存から脱却して自分自身の生き方を選択するという結末は良かったと思います。

21世紀の今も日本では未婚者への風当たりや偏見がまだあるのですから、1978年当時は「結婚しない女」というのは結構進んでいたのかもしれません。

ところで、同じシネ・ヌーヴォで『日本の青春』を見た後で『燃える秋』を見ましたので、1968年から1978年の僅か10年間で東京の街並みが随分と変わったのを感じました。

同時に、小林正樹が日本の街は汚らしいと言ってカラー映画を中々撮ろうとしなかったのも分かるような気がしました。白黒映像だと時代劇や現代劇でもスタイリッシュだったズームも、日本の街のカラー映像で多用されると普通のテレビドラマみたいに安っぽく見えてしまいます。

その反面、革命前にロケ撮影された当時のイランの映像が貴重です。亜希が影山の幻影を見て眩暈を起こす場所は、ペルセポリスの神殿ですので、マルジャン・サトラピ Marjane Satrapi (1969- ) 原作のアニメ映画『ペルセポリス』(2007) も連想します。

『燃える秋』でもう一つ特筆すべきは、武満徹の音楽です。特に、メインテーマのロマンチックな美しさが絶品です。いつもはストイックな音楽演出をする武満ですが、『燃える秋』は彼が作曲した小林映画の中では特に曲の量が多いです。この映画の曲作りに苦労した武満は仕上がりに不満だったそうですが、日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞したり、主題歌が彼のレコードで最高のヒット曲になったというのは何とも皮肉です。

ハイ・ファイ・セットが歌う主題歌は、作詞が原作者の五木寛之、作曲が武満徹という豪華仕様です。

歌自体はとても良いのですが、映画のエンディングで流れるとポップスなアレンジのせいで途端にテレビの2時間ドラマっぽくなるような気がしました。ここは、やはりテーマ曲を流した方が格調高く締めくくれたと思います。

複雑な心境で劇場を出ましたので、ロビーに展示されていた本物のペルシャ絨毯を見逃したのは迂闊でした(汗)

まぁ、何だかんだ言っても、今もソフト化されていない『日本の青春』と『燃える秋』をフィルム上映で見ることが出来た上に、仲代達矢の舞台挨拶まで聴けたのですから、シネ・ヌーヴォには感謝しています。

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東京裁判(1983年)

The Tokyo Trial
1983年6月4日 公開
講談社 製作
東宝東和 配給

モノクロ、スタンダード、277分

企画製作:講談社
総プロデューサー:足澤禎吉、須藤博
エグゼクティブ・プロデューサー:杉山捿三
プロデューサー:荒木正也、安武龍
原案:稲垣俊
脚本:小林正樹、小笠原清
編集:浦岡敬一
録音:西崎英雄
音楽:武満徹
指揮:田中信昭
演奏:東京コンサーツ
資料撮影:奥村佑治
ネガ編集:南とめ
史実考査:細谷千博 (一橋大学教授・現代史)、安藤仁介 (神戸大学教授・国際法)
翻訳監修:山崎剛太郎
監督補佐:小笠原清
助監督:戸井田克彦
ナレーター:佐藤慶

1990年12月25日、2本組のレンタルビデオ (VHS) で鑑賞しました。

映画『東京裁判』について語ることは、小林正樹の作品の中で最も難儀なことかもしれません。

何しろ題名通り極東国際軍事裁判のドキュメンタリー映画ですので、大がかりな題材です。裁判だけでも1946年(昭和21年)5月3日から1948年(昭和23年)11月12日まで2年以上もかかっています。法廷で裁かれた1928年のパリ不戦条約から1945年のポツダム宣言受諾までの歴史についてまで言及しますと、それこそ何冊も本が書けてしまうでしょう。

そう考えますと、4時間以上という膨大な上映時間さえも短すぎる気さえします。『人間の條件』全作の約半分ですし。

という訳で、個人的に興味を持った箇所のみ駆け足で綴っていきます。

映画『東京裁判』が完成に至るまでの経緯は、それだけでも一つのドキュメントになりそうな苦闘の道のりでした。

発端は、アメリカ国防省に保管されていた東京裁判の記録フィルムなどの資料が機密解除となった1970年代前半まで遡ります。当時の大蔵省の人物がアメリカの国立公文書館から582巻のコピーを入手しました。この人物の急逝後、遺されたフィルムは講談社に持ち込まれて映画化が企画されます。

1978年12月、最初に監督を依頼されたのは黒澤明でしたが、黒澤は四騎の会の同志であった小林正樹を推薦しました。

過酷な戦争体験をしてきた小林正樹にとっても、この企画が持ち込まれる以前から東京裁判は興味ある題材でした。1960年代後半には八住利雄 (1903-1991) に脚本を執筆してもらい劇映画にしようとしたこともありましたが、このときは実現しませんでした。

1979年2月、小林正樹の下、映画『東京裁判』の制作作業が開始しましたが、1080巻、200時間以上もの素材フィルムを一本の映画にまとめるまでに約4年もの歳月を要しました。

この作業の経緯が実に興味深いです。詳細は、小林正樹のインタビューと小笠原清 (1936- ) の回想が掲載された『映画監督 小林正樹』(岩波書店) や、荒木正也の著書『映画の香気 – 私のシネマパラダイス』(Echelle-1) をご参照ください。

『東京裁判』の音楽で特筆すべきは、その曲数の少なさです。

約4時間半という長尺の中で、音楽はオープニングとエンディングを含めても、全7曲、約8分半という短さです。常々、不要な音を削っていく作風の武満徹の映画音楽の中でも異例の少なさです。

引用された当時のニュース映画を除き、本編中で音楽が流れるのは、世界最初の原爆実験 (1945年7月16日、米国ニューメキシコ州でのトリニティ実験)、広島と長崎への原爆投下、戦後初の核実験 (1946年7月1日、ビキニ環礁でのクロスロード作戦)、南京大虐殺、アウシュビッツ収容所の場面です。それ以外の場面では音楽を全く流さないことによって、裁判が現実に起きた歴史であることを実感させ、尚且つ戦争被害者へのレクイエムが際立つという秀逸な音楽演出です。

又、小林正樹は、ナレーションに加藤剛を希望していましたが、多忙だった加藤の代わりに、佐藤慶が担当しました。結果的には、佐藤の渋みのあるナレーションがこの映画の世界に一致していたと思います。

因みに、佐藤慶は、フォンテックの『日本国憲法 朗読 CD』でも格調高い朗読を披露しています。

映画『東京裁判』は「ドキュメンタリー映画」のジャンルに分類されますが、使用されたフィルムの中にはドキュメント以外の素材も含まれています。(当時のフィルムや、二・二六事件の静止写真などには新たに録音された効果音も付けれています)

巣鴨プリズンでの場面では、小林正樹の劇映画『壁あつき部屋』から一部引用されていることを小林自身も語っています。(『映画監督 小林正樹』)

実は、映画史に「名作」として名高いレニ・リーフェンシュタール Leni Riefenstahl (1902-2003) の『オリンピア』(1938) と、市川崑の『東京オリンピック』(1965) でも、実際の競技後に後撮り(要するに「やらせ」)がありました。

五輪競技であっても再現映像を注釈もなく記録映画に含めることに賛否が分かれるのであれば、戦争という深刻な題材のドキュメンタリーで再現映像を使用することには更に慎重でなければなりません。

というのも、南京事件(南京大虐殺)の場面で使用されたのは、アメリカの国策映画『ザ・バトル・オブ・チャイナ』(1944) を中国側が追加撮影・再編集したプロパガンダ映画『中国之怒吼』(1945) だからです。(武満徹のドキュメンタリー Music for the Movies: Toru Takemitsu (1994) でもこの映像が流用されました)南京事件の目撃者であり東京裁判で証言した神父ジョン・ギレスピー・マギー John Gillespie Magee (1884-1953) が実際に被害状況を撮影した16mmフィルム(マギーフィルム)は、映画製作当時はまだ発見されていませんでした。

一応、引用場面では「これは南京事件を告発した中国側のフィルムである」という字幕が表示されていますが、この再現映像を挿入したことによって映画『東京裁判』は右派勢力から度々批判されることになります。

日本の戦争犯罪を裁いた東京裁判を批判する右派勢力は、南京事件を特に否定し続けています。

ですが、映画『東京裁判』のナレーションが「議論の余地のない戦争犯罪であった」と言うように、南京事件は歴史的事実として国内外で確定しています。

1980年代、旧陸軍将校の親睦団体「偕行社」の機関紙「偕行」が南京事件に関する情報を収集した際、元将兵からは虐殺を告白する手記が多く寄せられたのです。最終回の1985年3月号で、編集部の加登川幸太郎 (1909-1997) は、日本軍の責任を認めて、次のように謝罪しています。「旧日本軍の縁につながる者として、中国人民に深く詫びるしかない。まことに相すまぬ、むごいことであった」「戦後60年 記者がさぐる戦争の真実/南京大虐殺/偕行社の「お詫び」」しんぶん赤旗 2005年8月4日)

家永教科書裁判でも、1997年に最高裁判所が、文部省による南京虐殺事件の記述への訂正要求を違法とする判決が出ましたので、日本政府も南京事件の存在自体は認めるようになりました。

更に、2006年に安倍晋三 (1954-2022) と当時の中国国家主席だった胡錦濤 (1942- ) が立ち上げた歴史共同研究でも、日本語論文の270から271ページに、南京事件が起こったことが正式に認められています。「安倍首相が立ち上げた「日中歴史共同研究」が南京大虐殺を正式に認めていました」 Your News Online 2017年1月18日)

何よりも、東京裁判にて「日本無罪」を主張したインド側の判事ラダ・ビノード・パール Radhabinod Pal (1886-1967) でさえ、南京事件については、証言の一部を疑問視しながらも、事件そのものがあったと事実認定しているのです。(「日本の歴史認識」)

南京事件を包括的に調査したウェブサイトとしては「南京事件資料集」があります。特に、ゆうのページ「南京事件-日中戦争 小さな資料集」がお勧めです。南京事件を否定する数々の詭弁は、このサイトで既に論破されています。

又、2025年に増補改訂版が出版された笠原十九司の岩波新書『南京事件 新版』も入門書に最適です。

話を戻しますと、映画『東京裁判』は、被告となった28人のA級戦犯に対して同情的に見えるということで左派からも少なからず批判されたそうです。

裁判が抱えていた矛盾が明らかにしていく過程で相対的に被告たちに同情してしまうように見えてしまうのかもしれませんが、『人間の條件』を撮った小林正樹ですので日本が戦争中にしてきた侵略戦争や残虐行為も断罪しています。これは、映画『プライド 運命の瞬間』(1998) と比較すれば明白です。

『プライド』を監督した伊藤俊也 (1937- ) は、小林の『東京裁判』を「ドキュメンタリーというには解釈先行」と指摘していました。(「アメリカが急いだ憲法改正と「憲法9条」を考える伊藤俊也監督の最新作『日本独立』【後編】」歴史人 2020年12月26日)ですが、『プライド』が劇映画であったとしても、東条英機 (1884-1948) を悲劇の英雄として描き、南京事件を否定していたことこそ「解釈先行」どころでない常軌を逸した歴史の歪曲ではないでしょうか。

『キネマ旬報』1998年6月上旬号で、伊藤俊也は「南京事件そのものを否定していない」と言っておきながら、裁判では十分な証拠が提示されなかったなどと矛盾したことを語っています。東条を演じた津川雅彦 (1940-2018) も同号で、攻撃的な口調で南京事件を否定しています。そもそも、この映画の出資者や製作委員会には極右勢力の人物が数多く名を連ねているのですから、伊藤俊也がどう取り繕っても、この映画の狙いは見え透いています。

又、『東京裁判』は南京事件には触れているのに、約10万人のフィリピン人が日本軍によって虐殺されたマニラ大虐殺については殆ど全く言及されないという批判も見かけました。

『東京裁判』が公開された1983年以降に明らかになった事実も数多くあります。

映画では、バンカ島事件の生存者であるオーストリア陸軍看護大隊のヴィヴィアン・ブルウィンケル大尉 Vivian Bullwinkel (1915-2000) が証言する様子も短く紹介されています。裁判当時は主に日本軍による銃殺しか証言されませんでしたが、日本軍によって女性看護師たちが性的暴行を受けていたことが、2019年にBBCが報じたことによって明らかになりました。(「1942年に日本兵、豪の看護師21人を銃殺する前に何を 真実追求の動き」 BBC NEWS Japan 2019年4月22日)

バンカ島事件や、映画『アンボンで何が裁かれたか』(1990) でも描かれたアンボン島での日本軍による連合軍捕虜虐殺事件などでオーストラリア人が被った被害を考えると、裁判長のウィリアム・フラッド・ウェブ William Flood Webb (1887-1972) でなくとも、オーストラリア人が日本軍に敵意を抱くのも無理からぬことです。(ウェブ裁判長の姿勢には私も疑問を覚えますし、それ故に東京裁判は利害関係のない第三者によって裁かれるべきだったと思いますが)

戦後、上海で裁かれ処刑されるBC級戦犯の顔が見える箇所は白黒の色調が反転加工されていました。敗戦から38年後とは言え、親族や関係者が存命の可能性もあったでしょうから、プライバシーへの配慮でしょうか。

戦場であっても国際法を殆ど全く教育してこなかった日本軍の残虐行為は許されるものではないと映画『東京裁判』は断じますが、同時にBC級戦犯の中には人違いであったり上司の罪を擦り付けられたりして処罰・処刑された者もいたことが指摘されています。これは、小林正樹の『壁あつき部屋』でも描かれた問題でもあります。そして、組織の上層部がその悪事の責任を部下に押し付けて自分たちはのうのうと生き延びるという醜悪な構図は、近年の森友学園問題などでも明らかなように、現在も後を絶ちません。

1948年12月23日に東条英機たち7人の戦犯が巣鴨拘置所で処刑されたことを伝える場面の後、ハリー・S・トルーマン Harry S. Truman (1884-1972) 再選の祝賀パレードのフィルムが続きます。その映像に、東京裁判の後も世界中で続く戦争が次々とテロップで紹介されます。1950年の朝鮮戦争勃発、1951年のマッカーサーによる核兵器使用の主張、1954年のアルジェリア反仏独立戦争宣言、1956年のハンガリー事件、スエズ動乱、キューバ危機、1967年の中東動乱、1968年の米軍によるソンミ村虐殺事件、チェコ事件などの後、最後に「米軍 北爆を拡大」と出て、有名な「戦争の恐怖」の写真がファン・ティー・キムフック Phan Thị Kim Phúc (1963- ) のアップからズームアウトして、映画『東京裁判』は幕を閉じます。脚本を担当した小笠原清は、現在も戦火が絶えない現実を考慮して敢えて「終」を付けませんでした。

『東京裁判』は、ステュウット・アットキン Stuart Atkin のナレーションによる英語版も制作されました。ドイツでは、ベルリン国際映画祭の批評家連盟賞を受賞したり、国営テレビADRのニュースで報じられるなど大きな反響がありました。小笠原清によると、それをきっかけに出品依頼が次々と舞い込み、ロンドン、ニューヨーク、モントリオールなどテレビ放送も含めて少なくとも世界15ヶ国24都市で上映されたそうです。

勿論、題材が題材ですので、称賛だけでなく批判もありました。

例えば、第二次世界大戦や戦後史を専門としていたドリュー・ミドルトン Drew Middleton (1930-1990) は、1985年9月25日付の『ニューヨーク・タイムズ』の記事で、小林正樹は自国である敗戦国と被告に同情的であり、東洋より西洋の方が残虐だと描いているという風に、かなり否定的です。

ミドルトンは、映画『東京裁判』が次の疑問に殆ど回答を見出していないと指摘しています。「なぜ日本がアメリカに勝てるという自信を持てたのか」、「なぜ日本軍が捕虜や市民に対して残虐にふるまったのか」、「戦後の日本がアメリカの支援によって急速に復興できたにも関わらず、西太平洋の防衛の負担の一部をいつも拒否するのか」最初の二つの疑問はさて置き、最後の疑問に関しては、日本国憲法の第9条があるのですから自明としか言いようがありません。

戦時中の日本軍による残虐行為は確かに許しがたいものですが、戦勝国となったアメリカが戦後から現在に至るまで他国に軍事介入し続けていることも誉められたものではありません。映画『東京裁判』を「見方が偏っていて、心を動かされない」と酷評するミドルトンも、自国の悪行に目を瞑って「偏って」いるのではないでしょうか。

同年9月25日付の『ニューズデイ』のジョセフ・ジェルミス Jpseph Gelmis (1935- ) の記事や、10月1日付の『ヴィレッジ・ヴォイス』のデヴィド・エデルスタイン David Edelstein (1959- ) の記事も批判的な内容でした。

又、私的な話ではありますが、私が滞米中に知り合ったスコットランド出身の教授(歴史学のPh.D)に『東京裁判』のビデオの冒頭を見てもらったことがあります。彼の反応は明らかに否定的でした。理由を聞くと、映画の出だしが大戦末期から敗戦からでしたので、飢餓状態にある哀れな日本人を連合国が一方的にひどい目に合わせているように見えることが不満だったようです。

映画『東京裁判』は日本軍による数々の残虐行為も事実として批判していますが、アメリカ側からすれば、日本の戦争犯罪を裁く映画なのに裁判の正当性を疑問視され、真珠湾攻撃が事前に米国に察知されていたことが明らかにされた上に、ベトナム戦争まで持ち出されるのは確かに不愉快なことでしょう。

ですが、『東京裁判』エンディングのテロップ以外にも、1954年にグアテマラの民主的政権を転覆させたり、1973年9月11日にチリのクーデターを支援して、ピノチェト独裁政権を樹立したり、1977年にエルサルバドルの軍指導者を支援したり、1980年代にオサマ・ビン・ラディン等のテロリスト、ニカラグアのコントラ、サダム・フセインを支援したり、1991年と2003年にはイラクを爆撃したりするなど、毎年のようにアメリカ合衆国は他国に軍事介入したり独裁政権やテロリストを支援したりして、数百万人もの罪なき人たちを殺戮してきました。

そして、日本の敗戦から81年、映画『東京裁判』の公開から43年が経った今も、世界中で多くの人たちが理不尽な暴力によって苦しめられ無残に命を奪われ続けています。

ロシアの大統領ウラジーミル・プーチン Vladimir Putin (1952- ) は、2022年から開始したウクライナへの侵攻を現在も止めようとしていません。

イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ Benjamin Netanyahu (1949- ) は、パレスチナを執拗に破壊・侵略し続けて、女性や子供も含む多くの非戦闘員を虐殺しています。その上、ガザへの支援物資の搬入を妨害して、乳幼児を含む罪なき人々を飢餓・餓死に追い込んでいます。これは、もはやナチスによるユダヤ人虐殺と何ら変わりない「人道に対する罪」そのものです。

その極悪国家イスラエルを、アメリカの大統領ドナルド・トランプ Donald Trump (1946- ) は、非難するどころか公然と支持しています。2025年に再選後、イランの核施設を攻撃したり、ベネズエラを爆撃して大統領夫妻を誘拐したり、移民税関捜査局(ICE)による米国市民に対する暴行・殺害を野放しにするなど、トランプは一期目より遥かに苛烈な悪政を国内外に敷いています。

そして、日本の首相である高市早苗は、恥知らずにも、そんなトランプをノーベル平和賞に推薦したりして諂っています。非核三原則を邪魔扱いして原潜の保持まで推し進めようとする極右的な高市を担ぎ出すことで、自民党は改憲勢力としての本性を隠そうともしなくなりました。

こうした世界情勢を考慮して改めて映画『東京裁判』を見直すと、小林正樹が訴えようとしていたことがより切実に伝わってくるような気がします。この映画を極東国際軍事裁判のドキュメントとして見ると、説明が足りない箇所が目に付いたり、ナレーションが主張しすぎると感じるかもしれません。ですが、東京裁判を通して人間の愚行を再考する作品として見ると、単なる記録フィルムを超えた普遍的な何かが見えてきます。

植民地支配をしてきた西洋列強も、それを真似てより残虐な侵略をした軍国主義の日本も、敗戦国を裁きながら戦争を繰り返す戦勝国も、戦後は平和国家を目指しながら再び右傾化しつつある現代の日本も、国家や人種を超えて悪行を繰り返す人間の愚かしさを、小林正樹の『東京裁判』は圧倒的な説得力を持って今も私たちに提示し続けているのです。

 

食卓のない家(1985年)

The Empty Table
1985年11月2日 公開
MARUGENビル 製作
松竹富士 配給

カラー、ビスタビジョン、145分

製作:川本源司郎
企画:佐藤正之、原正人
プロデューサー:岸本吟一、大志万恭子
原作:円地文子
脚本:小林正樹
撮影:岡崎宏三
美術:戸田重昌
照明:下村一夫
録音:西崎英雄
編集:小川信夫
音楽:武満徹
出演:仲代達矢、小川真由美、中井貴恵、中井貴一、大竹しのぶ、平幹二朗、岩下志麻

小林正樹の遺作『食卓のない家』は、2026年現在も視聴するのが困難な状況です。1985年に公開された後、製作者である丸源グループ社長・川本源司郎 (1932-2024) の気まぐれでフィルムが門外不出にされてしまったからです。川本の死後、映画の権利関係がどうなったのか現在も不透明なままです。

小林映画の中で現在もソフト化されていない作品が3本ありますが、『日本の青春』はアマプラで配信中ですし、『燃える秋』はたまに名画座などで上映されます。『食卓のない家』のみが封印されたままで、一般の観客が目にすることができません。 

そのせいか、今では『食卓のない家』と言えば小川真由美が金魚をかじる場面ばかり語られる不当な扱いを受けています。(現在の動物保護やコンプライアンス遵守の観点からすれば、本物の金魚をかじる演出は確かに問題ではありますが…) 

ですが、例の金魚の場面は、鬼童子由美子が逮捕された息子・乙彦(中井貴一 1961- )を心配して錯乱してしまうという深刻な展開の一部であり、映像上もほんの一瞬しか映りません。本編を見ることさえ可能なら、この映画が決して猟奇的なキワモノではないことが分かるのだけに歯痒くてなりません。 

封印されたことによって過剰に注目されてしまう作品の代表格は、『ウルトラセブン』(1967-1968) 第12話「遊星より愛をこめて」かもしれません。何らかの方法で第12話を見た人の多くが「いつもと変わらないウルトラセブンだった」とか「異星人同士の相互理解を訴えた重要なエピソード」と語るように、封印という隠蔽行為そのものが作品を色眼鏡で見させてしまうのではないでしょうか。

『食卓のない家』も、虚心坦懐に鑑賞すれば、いたって上品で静謐なドラマであるのは一目瞭然です。

同時に、全盛期の小林正樹の演出と比較すると淡泊すぎる描写でもあります。一つの場面をワンカットで貫いて映画的テクニックを全廃した小林の真意は私には図りかねます。念願の企画であった『敦煌』が頓挫したことの喪失感が影響していたのかもしれません。黒澤明の『平家物語』や、スタンリー・キューブリック Stanley Kubrick (1928-1999) の『ナポレオン』と並んで、小林正樹の『敦煌』が実現できなかったことが残念でなりません。

ですが、小林の粘りが薄れていても、『食卓のない家』には色々と見所があります。

穏やかな作風だからこそ、成人した加害者の責任は個人で負うべきであり、無関係の家族が責められるべきではない、というテーマは今も色褪せない普遍的なものです。円地文子 (1905-1986) の原作のモデルとなったあさま山荘事件 (1972年) という特定の事件や政治性という限定的な題材に絞らなかったことによって、『食卓のない家』も時代を超えた作品となったと思います。

又、『いのち・ぼうにふろう』以来、14年ぶりに小林映画に出演した仲代達矢が小林正樹とその父親の分身とも言える鬼童子信之を演じてるのが感慨深いです。仲代夫妻の後押しで実現した企画でもあったせいか、無名塾出身の隆大介 (1957-2021) や、益岡徹 (1956- ) も出演しています。岩下志麻 (1941- ) や、小川真由美の他にも、小林昭二 (1930-1996)、浜田寅彦 (1919-2009)、小林哲子 (1941-1994) といったかつての小林映画の出演者も出ているのも懐かしいです。そして、小林正樹もその演技を称賛した中井貴恵 (1957- ) と、中井貴一の姉弟の共演も貴重です。

鬼童子が沢木香苗(真野あずさ 1957- )と有島教授(福田豊士 1934-1998)と一緒に訪れた鮨源の壁に、生沢朗 (1906-1984) が描いた『化石』ポスターのためのイラストが掛かっていました。

武満徹のタイトル曲は、どことなくレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ Ralph Vaughan Williams (1872-1958) の《グリーンスリーヴスによる幻想曲》(1934) の旋律を思わせます。物悲しくも優しい旋律が、家族愛を描いた作品の世界を彩ります。

ラストで、鬼童子は、乙彦の恋人・朝野みよ子(大竹しのぶ 1957- )と、その幼い息子を訪ねて北海道に向かいます。牧場で孫と出会った鬼童子の所に帰ってきたみよ子の朗らかなアップで映画は幕を閉じます。前作『東京裁判』のラストが「ナパーム弾の少女」のアップであったことを考えると対照的です。厳しい現実の中の微かな希望は、小林正樹の壮大な映画人生を締めくくる最期の映像に相応しいと思います。

 

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まとめ

以上、駆け足ではありますが、小林正樹の全監督作品について私見を綴ってみました。

デビュー作『息子の青春』から『あなた買います』までの初期作品は、まだ小林正樹がその本領を十分に発揮できていない感じがしました。勿論、『壁あつき部屋』のような力作もありますが、松竹大船調のホームドラマの中で窮屈にしているように見えました。

逆に、『いのち・ぼうにふろう』以降は意欲的な大作が続きましたが、私個人の興味の範疇からどこか遠くに行ってしまったかのような印象を受けました。(これは海外ロケだからという物理的な距離感ではなく、主観的・心情的な感想に過ぎませんが)

そう考えますと、仲代達矢と武満徹という稀有な才能が加わり、社会派のテーマと日本的な美意識が理想的に融合した作品を連発していた1960年代が小林映画の全盛期であったと改めて思いました。

小林正樹が映画監督であった33年の間に発表したのは22作品というのは寡作かもしれません。ですが、精魂込めて撮り続けてきた、どの作品も水準以上の出来であることは、やはり特筆に値します。

更に、現役を退いた後も、小林は、又従姉であった女優の田中絹代 (1909-1977) を救済するために奔走しました。晩年の田中絹代は癌を患っていて経済的にも困窮していましたので、小林は借金までして田中の入院費を負担したりしました。日本映画史を代表する大女優の晩年を支えた献身的な行為も、小林の功績として記憶されるべきです。

今年で生誕110年を迎えた映画監督・小林正樹の作品は、22作中20作がDVD、Blu-ray、ネット配信で比較的容易に視聴できます。『燃える秋』と『食卓のない家』が今も未ソフト化なのは残念ですが、10年前の生誕100年には多くの小林映画が一気に初DVD化され、現在はネット配信でも視聴できるようになったのですから、私がVHSソフトを探していた頃を考えると夢のようです。

そして、今年は小林正樹の没後30年でもあります。昨年11月には仲代達矢も他界するなど、小林映画の生き証人が次々と世を去っていくのを痛感しました。

敗戦から81年を迎えた今も、世界中で争いが絶えません。日本も戦争放棄と平和を目指した戦後の理想から逆行するような動きを見せています。

桃源郷とは程遠い現実だからこそ、苛烈な世界の中で、苦悩して、模索して、抵抗して、人間らしく生きることを諦めなかった人間を描いた小林正樹の映画は、時代と国境を越えて私たちの心を打つのです。

(敬称略)

※拙記事は、私の旧ブログ記事に大幅に加筆修正を加えたものです。
小林正樹監督作品鑑賞記(2017年)」(ゲンさんの雑記帳 2017年12月25日)

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上映企画

シネマセレクション:俳優 仲代達矢 (鎌倉市川喜多映画記念館) 2026/2/10~2/15

『切腹』 2/10、2/11、2/13、2/14、2/15

公式サイト:シネマセレクション:俳優 仲代達矢 | 鎌倉市川喜多映画記念館

 

「日本の戦争映画史」追加企画【小林正樹と岡本喜八 戦争を憎んだ映画監督】(シネ・ヌーヴォ) 2026/2/14~3/13

上映予定作品
黒い河2/18、2/19、2/20、2/21、2/22
人間の條件 第一部・第二部2/14、2/15、2/16、2/17、2/18
人間の條件 第三部・第四部2/14、2/15、2/16、2/17、2/19
人間の條件 完結篇2/14、2/15、2/16、2/17、2/20
からみ合い2/20、2/21、2/23、2/25、2/26
切腹 2/21、2/22、2/24、2/25、2/26
上意討ち 拝領妻始末2/27、2/28、3/3、3/4、3/5
いのち・ぼうにふろう 2/23、2/24、2/25、2/26、2/27

公式サイト:【小林正樹と岡本喜八 戦争を憎んだ映画監督】(シネ・ヌーヴォ)

 

怪異と映画 (神保町シアター) 2026/2/14〜2/27

怪談※161分の短縮版
2/21(土) 13:15
2/22(日) 11:00
2/23(祝) 15:30
2/24(火) 11:30
2/25(水) 13:30
2/26(木) 18:30
2/27(金) 14:00

公式サイト:上映特集|神保町シアター(神保町シアター)

 

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参考資料(随時更新)

書籍・記事

『どっこいショ』 遠藤周作、講談社、1974年

Mellen, Joan. Voices from the Japanese Cinema, Liveright, 1975

『役者 MEMO 1955-1980』 仲代達矢、講談社、1980年

『廣澤榮・映画シナリオ集』 廣澤榮、宝文館出版、1985年

Middleton, Drew. “Film: ‘The Tokyo Trial.’ The New York Times, September 25, 1985.

『食卓のない家』パンフレット 松竹株式会社事業部、1985年

『上意討ち心得』 滝口康彦、新潮社、1995年

『キネマ旬報 1996年12月下旬号』 ※小林正樹 追悼特集

『現代歴史学と戦争責任』 吉田裕、青木書店、1997年

武満徹著作集 3』 武満徹、新潮社、2000年

日本の軍隊 兵士たちの近代史』 吉田裕、岩波書店、2002年

未完。 仲代達矢』 仲代達矢、KADOKAWA、2014年

黒澤明と三船敏郎』 ステュアート・ガルブレイス4世、櫻井英里子 訳、亜紀書房、2015年

サムライ 評伝 三船敏郎』 松田美智子、文藝春秋、2015年

『生誕100年 映画監督・小林正樹』 庭山貴裕、小池智子 編、公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館、2016年

映画監督 小林正樹』 小笠原清、梶山弘子 編、岩波書店、2016年

役者なんかおやめなさい』 仲代達矢、サンポスト、2017年

仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』 春日太一、文藝春秋、2017年

演じることは、生きること 人生の舞台で紡いだ言葉』 仲代達矢、PHP研究所、2018年

アメリカ侵略全史 第2次大戦後の米軍・CIAによる軍事介入・政治工作・テロ・暗殺』 ウィリアム・ブルム 著、益岡賢・大矢健・いけだよしこ 訳、作品社、2018年

岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』 岸惠子、岩波書店、2021年

「主体の鍛錬―小林正樹論」 荒川求実 『すばる』2022年10月号、集英社

『映画の香気 ―私のシネマパラダイス―』 荒木正也、Echelle-1、2022年

鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』 春日太一、文藝春秋、2023年

月刊シナリオ 10月号』 日本シナリオ作家協会、2024年 ※『日本の青春』のシナリオ収録

南京事件 新版』 笠原十九司、岩波書店、2025年

歴史は“強者ファースト”か? 日本社会にはびこる歴史否定を世界的に考える』 板垣竜太・加藤圭木・岡本有佳 編、岩波書店、2026年

キネマ旬報 2026年2月号※仲代達矢 追悼特集

 

ウェブサイト・ネット記事

● 「映画監督 小林正樹 生誕100年記念プロジェクト」- 松竹シネマクラシックス

Ehrenstein, David. “Kwaidan.” The Criterion Collection, The Criterion Collection, October 9, 2000.

Kemp, Philip. “The Human Condition: The Prisoner.” The Criterion Collection, September 8, 2009.

Ríos, Emma. “Thoughts and Words Won’t Save Us: One Scene from The Human Condition.” The Criterion Collection, Jun 2, 2014.

Skillman, Erik. “Kwaidan by Sean Freeman.” The Criterion Collection, October 30, 2015.

市川崑と小林正樹~モダニストとクラシシスト」(星虹堂通信 2016年4月20日)

ふかくこの生を愛すべし~「生誕100年 映画監督・小林正樹」@世田谷文学館」(星虹堂通信 2016年7月30日)

『映画監督 小林正樹』を読む~幻の『敦煌』について」(星虹堂通信 2017年2月16日)

今考えられる最良の状態で完全復元!『東京裁判』( 4Kデジタルリマスター版)小笠原清さんに聞く!」(キネ坊主 2019年8月9日)

小林正樹監督『東京裁判』を観て、八住利雄脚本『東京裁判』を読む」(星虹堂通信 2019年9月26日)

Asch, Mark. “Masaki Kobayashi Plays Hardball.” The Criterion Collection, August 17, 2020.

「そのままでいること」の困難~荒川求実『主体の鍛錬—小林正樹論』」(星虹堂通信 2022年10月4日)

ある映画プロデューサーの回想~荒木正也『映画の香気-私のシネマパラダイス-』」(星虹堂通信 2022年12月31日)

● 「日本の軍国主義メモ

 

映像・音楽ソフト

CD

CD『黒澤明監督作品 乱 武満徹 サウンドトラック集』 キングレコード、1985年 ※『東京裁判』と『予言』の音楽も収録

『オリジナル・サウンドトラックによる武満徹 映画音楽① 小林正樹監督作品篇』 ビクター音楽産業、1990年

『武満徹・映画音楽選集 特典盤』 ビクター音楽産業、1991年

LD

Music for the Movies: Toru Takemitsu (1994). Directed by Charlotte Zwerin.

DVD

『怪談』 東宝株式会社、2003年

『上意討ち ―拝領妻始末―』 東宝株式会社、2004年

『東京裁判』 キングレコード株式会社、2004年

息子の青春/まごころ』 松竹株式会社、2016年

この広い空のどこかに』 松竹株式会社、2016年

三つの愛』 松竹株式会社、2016年

美わしき歳月』 松竹株式会社、2016年

壁あつき部屋』 松竹株式会社、2016年

あなた買います』 松竹株式会社、2016年

』 松竹株式会社、2016年

黒い河』 松竹株式会社、2016年

化石』 松竹株式会社、2016年

『いのち・ぼうにふろう』 東宝株式会社、2016年

Blu-ray

『切腹』 松竹株式会社、2004年

Harakiri. The Criterion Collection, 2011.

Kwaidan. The Criterion Collection, 2015.

The Human Condition. The Criterion Collection, 2021.

ネット配信

日本の青春』Amazon Prime Video

 

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